第27回(令和6年度)精神保健福祉士国家試験午後の問題
精神医学と精神医療
- 問題1 次のうち、成人の認知能力を詳細に評価するための心理検査として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 文章完成法テスト
- 2 ロールシャッハテスト
- 3 WAIS-Ⅳ知能検査
- 4 WPPSI-Ⅲ知能検査
- 5 P-Fスタディ
- 問題2 神経性無食欲症に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 身体に対する認知のゆがみがある。
- 2 甲状腺機能が亢進{こうしん}する。
- 3 無月経となる。
- 4 性差では男性に多い。
- 5 身体的活動が低下する。
- 問題3 Aさん(42歳)は、夫(40歳)、娘(10歳)、息子(6歳)の4人家族である。ある日、最大震度7の地震が起こり、Aさんの家は半壊した。Aさんとその家族は全員かすり傷程度のケガで済んだものの、自宅での生活が難しく、避難所である小学校の体育館での生活となった。
被災して3日が経過した。避難所を訪れたDPATのスタッフに対してAさんは「倒れてきた家具の下敷きになるところでした。現実のことと思えず、夢を見ているような感覚でした。今でもその時の出来事が何度も思い起こされてとても不安です。夜もよく眠れていません」と話した。
次のうち、Aさんの状態として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 全般不安症
- 2 ナルコレプシー
- 3 強迫症
- 4 急性ストレス反応
- 5 心気症
- 問題4 次の記述のうち、うつ病を有する人に特徴的な妄想による発言として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 「誰かに盗聴されている」
- 2 「家族が預金通帳を盗んだ」
- 3 「過去に罪を犯してしまった。今その罰を受けている」
- 4 「自分は神だから死ぬことはない」
- 5 「自分は高貴な生まれである」
- 問題5 次のうち、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において、自閉スペクトラム症と診断するための症状に含まれるものとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神運動焦燥または制止
- 2 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ
- 3 チック症状
- 4 気分の高揚
- 5 幻覚
- 問題6 次の記述のうち、社会生活技能訓練(SST)の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神分析の考え方を応用したプログラムの一つである。
- 2 絶対臥褥{がじょく}により活動意欲を高める。
- 3 自己認識を深める心理劇である。
- 4 認知行動療法の考えを取り入れている。
- 5 絵画や音楽を通じた表現的精神療法の一つである。
- 問題7 次のうち、精神科病院において業務従事者による精神障害者への虐待を発見した者が「精神保健福祉法」に基づいて取るべき行動として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 国民健康保険団体連合会への申立て
- 2 都道府県への通報
- 3 警察署への通報
- 4 地方裁判所への申立て
- 5 市町村への通報
- (注) 「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
- 問題8 Aさん(30歳、女性)は、母親への殺人未遂の疑いで逮捕された。しかし、起訴前鑑定で、統合失調症に罹患{りかん}しており「母親を殺せ」という幻聴の強い影響下で犯行に及んだと示された。このため、犯行当時にAさんは心神喪失状態だったと認められて不起訴処分とされ、検察官から「医療観察法」の審判が申し立てられた。
次の記述のうち、申立て後、最初に行われることとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 地方裁判所が鑑定入院を命じる。
- 2 地方裁判所において裁判官と精神保健審判員が合議を行い、処遇を決定する。
- 3 精神保健参与員が意見を述べる。
- 4 多職種チームによる治療を行う。
- 5 指定入院医療機関においてCPA会議を実施する。
- (注) 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
- 問題9 精神医療と保健、福祉との連携に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神保健福祉センターは、主に精神科医療機関への技術協力を行う機関として位置づけられる。
- 2 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムは、認知症の高齢者が地域で自立した生活を可能にすることが目的である。
- 3 精神科病院の主な役割は、精神疾患への早期介入である。
- 4 精神科救急情報センターは、精神科救急に関する文献検索サービスを関係機関に提供する。
- 5 認知症初期集中支援チームは、在宅の認知症が疑われる人や認知症の人に対して、多職種で集中的に支援し、地域で暮らし続けられるようにすることを目指す。
現代の精神保健の課題と支援
- 問題10 次のうち、「令和2年患者調査」(厚生労働省)において、精神疾患を有する外来患者数の内訳で最も多い傷病分類として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 てんかん
- 2 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
- 3 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害
- 4 精神作用物質使用による精神及び行動の障害
- 5 気分[感情]障害(躁{そう}うつ病を含む)
- 問題11 次のうち、吉川武彦が概念化した精神保健活動の三つの側面における支持的精神保健に該当するものとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 こころの健康づくりのための市民講座の開催
- 2 在宅の精神疾患患者への訪問指導
- 3 高齢住民を対象とした睡眠衛生教育
- 4 精神保健福祉ボランティアの育成
- 5 住民の精神保健の増進と精神障害者支援のための拠点づくり
- 問題12 A精神科病院に長期入院していたBさん(64歳)は、地域移行支援を受けた後、1年前からC生活介護事業所を利用しながら地域のアパートで一人暮らしをしている。Bさんの食生活は整っており、血圧・血糖値・コレステロールや中性脂肪には問題がなかった。しかし近頃は、長年の運動不足から筋力が低下したことによって、短時間の歩行でも息切れをし、足が上がりにくくC事業所内の階段もすぐには上れない状態が目立ち始めた。そこでC事業所では、Bさんやほかの利用者の状況も鑑み、運動プログラムを取り入れ、Bさんにも参加してもらうよう促すことにした。
次のうち、Bさんの状態を表す症候群として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 コルサコフ症候群
- 2 メタボリック症候群
- 3 ロコモティブ症候群
- 4 悪性症候群
- 5 ガンザー症候群
- 問題13 次のうち、少年法における「その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑事法令に触れる行為をする虞のある少年」の呼称として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 犯罪少年
- 2 触法少年
- 3 不良行為少年
- 4 ぐ犯少年
- 5 特定少年
- 問題14 次のうち、文部科学省の「スクールソーシャルワーカー活用事業実施要領」に記載されたスクールソーシャルワーカーの職務内容として、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 児童の心理状態の評価
- 2 児童福祉法に基づく児童の一時保護
- 3 学校内におけるチーム体制の構築、支援
- 4 学級活動での保健指導
- 5 教職員等への研修活動
- 問題15 職場でのハラスメントに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害は、パワーハラスメントに該当する。
- 2 労働者数300名未満の事業場では、ハラスメント対応の措置が事業主の努力義務となっている。
- 3 セクシュアルハラスメントの内容として、同性に対するものは対象外である。
- 4 マタニティハラスメントの禁止は、母子保健法で規定されている。
- 5 ハラスメントに起因する精神障害は、労働災害認定基準から除外されている。
- 問題16 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 2年に1度の実施が義務づけられている。
- 2 休職者の職場復帰支援のための仕組みとして創設された。
- 3 高ストレスと判定された労働者のうち、希望があった者への医師による面接指導の実施が事業者に義務づけられている。
- 4 精神保健福祉士は、厚生労働大臣の定める研修を修了することなく実施者になれる。
- 5 検査結果の分析は、地域障害者職業センターが行う。
- 問題17 A県精神保健福祉センターのB精神保健福祉士のところに、Cさんが相談に訪れた。兄を自死で亡くしたというCさんは、自分と同じように自死で家族を亡くした経験がある人々が集まる「分かち合いの会」を主催しており、行政機関として何らかの協力をしてほしいというものだった。B精神保健福祉士は上司と相談した結果、センターの会議室の提供と広報への協力をするとともに、「分かち合いの会」に業務として定期的にオブザーバーで参加することとなった。
次のうち、この自殺対策活動を表す言葉として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 イノベーション
- 2 インターベンション
- 3 ハームリダクション
- 4 プリベンション
- 5 ポストベンション
- 問題18 保健師に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 児童相談所には、保健師の配置が必須である。
- 2 保健所の所長は、保健師でなければならない。
- 3 保健師の資格は、地域保健法で定められている。
- 4 労働者数50人以上の事業場では、保健師を選任しなければならない。
- 5 看護師国家試験に合格しなくても、保健師になることができる。
精神保健福祉の原理
- 問題19 次の記述のうち、障害者福祉を支える理念や概念の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 ソーシャルロールバロリゼーション(SRV)とは、人間らしく生きる権利の回復を目指すことである。
- 2 リハビリテーションとは、人権擁護と公衆衛生の観点から健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを主目的とするものである。
- 3 バリアフリーとは、重大な逆境に遭遇したにもかかわらず、前向きに生きていこうとする復元力のことである。
- 4 エンパワメントとは、無力化された人々が本来持っている力を取り戻し、抑圧的な状況を客観的に批判し主体的な変革を目指すことである。
- 5 レジリエンス(resilience)とは、障害や疾患をもつ人というラベルによって生じる社会的不利を軽減することである。
- 問題20 次のうち、精神科病院での職員による入院患者への暴行等の重大な不祥事件を契機に、任意入院制度を創設した法律として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神衛生法
- 2 精神病者監護法
- 3 精神病院法
- 4 精神保健法
- 5 「精神保健福祉法」
- (注) 「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
- 問題21 A高等学校では、保健体育の授業において、心の健康への意識を高め、共生社会への理解を深めることを目的として「こころの健康教育」を実施している。今回は近隣にあるB精神科病院のC精神保健福祉士と、精神障害当事者のDさん(63歳、男性)がゲストスピーカーとして招かれた。授業はC精神保健福祉士とDさんの対話形式で進められた。その中で、Dさんは精神科病院における35年の入院生活やグループホームへの退院、今の生活の様子を語った。Dさんからは、長年病院内で変化のない集団生活を続けたことで気力が失われ、退院を諦めるようになったこと。入院当初は強い思いであった退院を決断するのに長い時間を要したこと。退院した今は、地域に出て良かったと実感するといった気持ちが語られた。
次のうち、Dさんの語りから考えられる入院中の状態として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 施設症
- 2 施設コンフリクト
- 3 トラウマ
- 4 スティグマ
- 5 回転ドア現象
- 問題22 次の記述のうち、「精神保健福祉法」に定められている精神障害者の家族の権利・義務として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神障害者に医療を受けさせるに当たって、医師の指示に従う。
- 2 精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督する。
- 3 精神障害者の財産上の利益を保護する。
- 4 都道府県知事に退院請求の申立てができる。
- 5 回復した措置入院者等を引き取る。
- 問題23 次の記述のうち、精神保健福祉士法成立の社会的背景として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 年間自殺者が3万人を超え続け、国民のメンタルヘルスが社会問題化した。
- 2 頻発する自然災害に対し、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の必要性が高まった。
- 3 諸外国と比べて精神科の入院医療を受けている者の割合が高く、入院期間も長期にわたっていた。
- 4 「障害者権利条約」を批准するため、国内法の整備が急がれた。
- 5 「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において、「入院医療中心から地域生活中心へ」が示された。
- (注) 「障害者権利条約」とは、「障害者の権利に関する条約」のことである。
- 問題24 次の記述のうち、精神保健福祉士法に規定される精神保健福祉士の義務として、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 保健医療サービス、障害福祉サービス等の提供者と連携を保つ。
- 2 担当する利用者の立場に立って誠実に業務を行う。
- 3 資質向上のため、厚生労働省令で定める研修を受講する。
- 4 職を辞した後の秘密保持義務は、10年で解除される。
- 5 業務を行うに当たっては、主治医の指示を受ける。
(精神保健福祉の原理・事例問題)
次の事例を読んで、問題25から問題27までについて答えなさい。
〔事 例〕
会社を定年退職したAさん(60代後半)は、昨年妻を事故で亡くし、一人息子(30代)と二人で暮らしている。息子は仕事でのトラブル等が重なり、自宅にひきこもって3年になる。Aさんは息子を一度強く叱責し拒絶されてからは話し掛けることもできなくなり、息子を心配しながら一人で家事を担い、日々を過ごしていた。最近Aさんは生活の中で年齢を感じることが増え、自分に何かあったら息子はどうなるだろうとの思いから、県のホームページで見付けたひきこもり地域支援センター(以下「センター」という。)に電話をかけた。息子とうまく関係を築けず拒絶されているように感じること、3年もひきこもっている息子の将来についての心配などをAさんはしっかりした口調で話した。電話を受けたB精神保健福祉士はその話を傾聴し、Aさんをねぎらい、センターとして関わりたいことを伝え、情報を整理した。(問題25)
センターの対応に安堵{あんど}したAさんは、B精神保健福祉士とであれば息子のことについて進展を得られるように感じ、時折センターに出向くようになった。そのうちAさんは、いつまでこの状態が続くのか、自分の息子だけなぜこうなのかなど、悩みを具体的に語るようになった。そこでB精神保健福祉士は、センターで行われている「ひきこもり家族の会」(以下「家族会」という。)への参加をAさんに勧めた。(問題26)
家族会に参加したAさんは、そこでの学びからセンターに行った感想を添えたメッセージや「名刺の人が話をしてみたいそうだ」とB精神保健福祉士の名刺を添えたセンターのチラシを台所のテーブルに置くようになった。息子はそれらを夜中に台所で読んでいるようだった。
ある日、B精神保健福祉士のところに電話がかかってきた。B精神保健福祉士は、その名前からAさんの息子からであることに気付いた。Aさんの息子は、仕事も続かず、職場でも家でも誰ともうまくやれないこと、学生時代もそうだったことなどを語った。(問題27)
- 問題25 次のうち、この電話相談においてB精神保健福祉士が優先的に評価すべきこととして、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 息子の精神的健康
- 2 息子の就労能力
- 3 現在の経済状況
- 4 Aさんの家事負担
- 5 Aさんの現在の発達課題
- 問題26 次の記述のうち、この時点でB精神保健福祉士がAさんに参加を勧めた理由として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 1 体験を共有する場を提供するため。
- 2 グリーフケアのため。
- 3 若者支援の社会活動に参加してもらうため。
- 4 コミュニケーション能力を高めるため。
- 5 家族会のファシリテーターになってもらうため。
- 問題27 次の記述のうち、この段階でB精神保健福祉士が考えた関わりの内容として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 ひきこもり対応として、外出する場面を設定する。
- 2 社会的な役割を得るために、当事者の会の立ち上げを促す。
- 3 就労支援を始めるために、職業評価を受けるよう提案する。
- 4 父親に自分の気持ちを伝えるために、社会生活技能訓練(SST)を行う。
- 5 支援者として関係を築くために、無知の姿勢をとる。
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
- 問題28 地域活動支援センターで精神保健福祉士の実習を行っている学生Aさんは、利用者Bさんとの関係形成を進めている。Bさんから「友人ができなくて寂しい」と聞き、自分もそのような経験があって悩んだことを自己開示した。その日の実習を終え、帰り支度をしていると、Bさんから声を掛けられ「私と似たような経験をしているAさんなら、私のことを分かってくれる。友達になってほしい」と言われた。AさんはBさんから信頼されているのだと思い「実習中ならいいですよ」と答えた。次の日、Bさんから「今日から友達ね」と声を掛けられた。Aさんは昨日の対応で良かったのか心配になり、実習指導者のC精神保健福祉士に相談すると「専門的援助関係について、改めて考えていきましょう」と指導を受けた。
次のうち、C精神保健福祉士がAさんに指導した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 パターナリズム
- 2 非審判的態度
- 3 バウンダリー
- 4 ナチュラルサポート
- 5 役割拘束
- 問題29 次の記述のうち、精神保健福祉士が面接で用いる「感情の反映」の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 クライエントの表現をそのまま繰り返す。
- 2 クライエントの話に込められている気持ちを言語化する。
- 3 クライエントが話したことをまとめてフィードバックする。
- 4 クライエントの感情を尊重し認める。
- 5 クライエントの思いと行動のずれを明らかにする。
- 問題30 次の記述のうち、離転職を繰り返す精神障害者に対して精神保健福祉士が行うナラティブアプローチとして、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 クライエント自身の職場適応の課題を細分化し整理して、短期集中で解決を図る。
- 2 クライエントの語りから、問題となった出来事と本人を切り離す。
- 3 クライエントの離転職にまつわる思い込みのストーリーにある誤りを指摘する。
- 4 クライエントとの対話を通して離転職要因を1つに特定する。
- 5 離転職した経緯の語りから、成長を促すために機関で可能な支援の展開を図式化する。
- 問題31 次の記述のうち、インターディシプリナリー・モデルによる支援として、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 入院時カンファレンスで、医師の指導により精神保健福祉士が患者の家族関係を確認する。
- 2 精神科デイ・ケアで、看護師が運動プログラムを担当する。
- 3 包括型地域生活支援(ACT)チームで、作業療法士がクライエントの服薬状況を確認する。
- 4 多職種が対等な立場で参加する地域移行支援会議で、精神保健福祉士からクライエントが活用できる制度について述べる。
- 5 ケア会議で、就労支援及び医療機関スタッフがそれぞれ専門職の立場から意見を述べ合い支援方針を決める。
- 問題32 次の記述のうち、精神保健福祉士が行うコミュニティワークとして、適切なものを2つ選びなさい。
- 1 住民が運営し、精神障害の有無にかかわらず集えるサロンの立ち上げを支援する。
- 2 精神科デイ・ケアでの話合いで、地域にある居場所の見学を企画する。
- 3 自治会と共に精神障害の理解に関する住民ヒアリングを行い、結果をまとめる。
- 4 障害福祉サービスの利用を希望する精神障害者のセルフプラン立案を支援する。
- 5 精神保健福祉ボランティアグループの定例会で、ファシリテーターを担う。
- 問題33 次の記述のうち、精神保健福祉士が行うソーシャルアクションとして、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 積極的に地域へ出向き、支援が必要なクライエントを発見する。
- 2 社会資源の開発のために、国や地方自治体に働きかける。
- 3 社会関係資本を形成するために、地域における人々の精神的な絆{きずな}を強める。
- 4 クライエントの支援に関する助言を他の専門職に求める。
- 5 クライエントのニーズを充足するために、社会資源につなげる。
(ソーシャルワークの理論と方法(専門)・事例問題)
次の事例を読んで、問題34から問題36までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(53歳、男性)は、35歳の時「誰かが自分の悪口を言っている」と訴えたことから、両親に付き添われてB精神科病院を受診した。そこで統合失調症と診断され、1年間入院した。退院後は両親と暮らしながら治療を続けた。その間に父親が亡くなり、49歳の時に母親が認知症を発症し、Aさんが母親の世話をすることになった。50歳の時にAさんは介護のストレスから病状が悪化し「自分の悪口がテレビで流れている」と夜中に大声を出してテレビを自宅前に放り出し、近所を巻き込む騒ぎとなり、今回の入院となった。Aさんの入院後、母親は民生委員から見守り支援を受けていたが、高齢者施設へ入所した。
入院から1年経過した後、病棟担当になったC精神保健福祉士は、前任者から「Aさんは退院可能だが、退院に消極的」と引継ぎを受け、Aさんと面談をした。Aさんは「不都合なこともないし、このままでいい。自宅は誰も居ないし、一人暮らしは経験がないし、人と話すのは苦手だから無理」と話した。(問題34)
C精神保健福祉士は、地域移行支援を利用して退院したDさんをAさんに紹介し、体験談を話してもらった。Dさんとの交流が半年ほど続き、Aさんは「自分も退院できるかな」とC精神保健福祉士に話した。そこで、C精神保健福祉士はAさんを地域移行支援の利用につなげ、指定一般相談支援事業所のE精神保健福祉士が支援を開始した。E精神保健福祉士は、初回面談でAさんから退院への期待や不安などの揺れ動く気持ちを聞いた。それを踏まえ、Aさんに対して支援を行った。(問題35)
AさんはE精神保健福祉士とグループホームを見学したが、ほかの入居者との交流に負担を感じたため、自宅への退院も考え始めた。E精神保健福祉士と共に数度自宅へ外出をした後、1人で外泊した。外泊後、E精神保健福祉士と面談したAさんは「家の中は何とかなるかもしれない。でも、近所に迷惑を掛けたので、近所の目が怖い。本当は買物にも行きたいのだけど」と話した。(問題36)
その後、Aさんは退院し、障害福祉サービスを利用して一人暮らしを続けている。
- 問題34 次の記述のうち、この時にC精神保健福祉士がAさんに返した言葉として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 「不都合がないなら、今のままでも悪くはないですね」
- 2 「では、退院先をグループホームにしましょう」
- 3 「退院後の生活を考えると、不安を感じるのですね」
- 4 「まだ50代だから、退院を諦めてはいけませんよ」
- 5 「退院して、あなたはどこで誰と暮らしていますか」
- 問題35 次の記述のうち、E精神保健福祉士がAさんに行った支援として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 退院した患者の定期的な集いに同行した。
- 2 精神障害者保健福祉手帳の取得を提案した。
- 3 宿泊型自立訓練の体験を調整した。
- 4 今回の入院の初期支援が適切に行われていたか評価した。
- 5 生活福祉資金貸付制度について説明した。
- 問題36 次の記述のうち、この後にE精神保健福祉士が行う支援として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 近所の目が怖くなくなってから退院することを提案する。
- 2 Aさんが外泊する際、Dさんに付き添ってもらうよう調整する。
- 3 近所との関係修復を図るために、1軒ずつお詫{わ}びに回る。
- 4 次回の外泊時には外出しないで済むよう、必要な物をAさんと事前に準備する。
- 5 Aさんと一緒に、民生委員に近所付き合いのサポートを依頼しに行く。
精神障害リハビリテーション論
- 問題37 次の記述のうち、アンソニー(Anthony,W.)らによる「精神科リハビリテーションの基本原則」に関するものとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 就労支援は除外される。
- 2 最大の焦点は、早期の回復を目指し退院させることである。
- 3 当事者は専門職への依存を避け、自身の力で自立を目指す。
- 4 様々な技法を折衷的に駆使する。
- 5 専門職が主導的にリハビリテーション計画を作成する。
- 問題38 次の記述のうち、パーソナルリカバリーの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 激しい症状が治まり、薬を必要としない状態になること。
- 2 支援者がクライエントの利益のために、本人の意思に関わりなく判断すること。
- 3 支援者が定めた方針に、クライエントが従うこと。
- 4 専門職が自らの支援やその役割について責任をもって説明を行うこと。
- 5 障害があっても希望をもって新たな人生を再発見し、主体的に生きること。
- 問題39 A精神保健福祉士が勤務する地域活動支援センターでは、これまで新型コロナウィルス感染症の流行のため利用人数や利用時間を制限していたが、全面的に再開した。再開後これまでのメンバーに加えて、新たなメンバーも増えてきた。メンバー同士の交流が増えるにつれて、A精神保健福祉士に対して「他の人からの誘いを断りたいけど、うまく断れなくて困っている」「自分の意見や考えをうまく伝えられるようになりたい」といった相談が多くなった。そこでA精神保健福祉士は、相手の気持ちを大切にしながら自分の意見を主張できることを目指す集団プログラムの実施をメンバーに提案した。
次のうち、このプログラムとして、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 リワークプログラム
- 2 アサーショントレーニング
- 3 TEACCH
- 4 SMARPP
- 5 IMR
(精神障害リハビリテーション論・事例問題)
次の事例を読んで、問題40から問題42までについて答えなさい。
〔事 例〕
ある日、市役所の精神保健に関する相談窓口にAさん(43歳)が来庁し、担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると、会社員である夫(45歳)は、日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し、身体疾患の治療のため入院をした。その後、退院を迎えるに当たり、Aさんと夫は、主治医から「体調は落ち着きましたが、アルコール依存症の可能性があるので、精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが、退院後、夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず、激しく怒り出すようになった。また、夫が飲酒を再開してしまい、そのことについて、Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(問題40)
Aさんの話からB精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは、アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け、Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(問題41)
このプログラムに参加するようになり、しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し、入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく、Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが、実は、ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り、Aさんも「夫が飲酒を再開しないために、私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は、精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ、家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(問題42)
- 問題40 次の記述のうち、この時点のB精神保健福祉士の対応として、適切なものを1つ選びなさい。
- 1 夫のケアを担うAさんの能力について評価を行う。
- 2 Aさんの怒りの感情や無力感に対して肯定的に関わる。
- 3 夫の入院治療を強く勧める。
- 4 夫の客観的情報の収集を優先して行う。
- 5 Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。
- 問題41 次の記述のうち、このプログラムの特徴として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 対立的手法を積極的に活用する。
- 2 日本で開発されたものである。
- 3 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。
- 4 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。
- 5 アルコール依存症に特化したプログラムである。
- 問題42 次のうち、B精神保健福祉士が紹介した自助グループとして、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 断酒会
- 2 ギャマノン(GAM-ANON)
- 3 アラノン(Al-Anon)
- 4 ナラノン(Nar-Anon)
- 5 ナルコティクス・アノニマス(NA)
精神保健福祉制度論
- 問題43 次のうち、「精神保健福祉法」に規定されている機関として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 発達障害者支援センター
- 2 市町村保健センター
- 3 認知症疾患医療センター
- 4 基幹相談支援センター
- 5 精神保健福祉センター
- (注) 「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。
- 問題44 精神医療審査会に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 市町村が事務を行う。
- 2 精神障害当事者を委員とすることが必須である。
- 3 定期病状報告の審査対象から措置入院者は除外される。
- 4 入院者からの電話による退院請求は審査の対象となる。
- 5 精神科病院の管理者に入院者の処遇改善を命令できる。
- 問題45 生活保護制度に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
- 1 保護の基準額は、全国一律である。
- 2 精神障害者が申請する場合、資力調査は免除される。
- 3 原則として、住宅扶助は現物給付である。
- 4 原則として、世帯単位で保護の要否及び程度が定められる。
- 5 精神障害者保健福祉手帳の1級及び2級所持者には、生活扶助の障害者加算がある。
(精神保健福祉制度論・事例問題)
次の事例を読んで、問題46から問題48までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(40歳、男性)はB県C市に在住し、5年前に父親の会社を継ぎ、Aさんを含む社員5名で製造業を営んでいた。Aさんは独身できょうだいはおらず、両親は既に亡くなっていて交流のある親戚もいない。
Aさんは真面目な性格で朝から晩まで仕事をするも、不況のあおりを受けて近年は赤字続きで、自分のせいで会社が潰れてしまうと悩んでいた。最近では食事量が減って、見るからにやつれたAさんの状況を見て社員はとても心配していた。さらに「死んでしまいたい」という発言も多くみられるようになり、社員は精神科受診を勧めた。Aさんは当初受診を拒否していたが、社員らに連れられて渋々D精神科病院を受診した。精神保健指定医である医師は入院治療の必要性を認めたが、Aさんは頑なに入院を拒否した。身寄りもないことからC市長同意による入院の手続が行われた。(問題46)
「精神保健福祉法」に基づきD精神科病院の管理者から選任されたE精神保健福祉士はAさんに自己紹介をして、今後のことなどについて丁寧な説明を行った。(問題47)
その後もE精神保健福祉士はAさんとの面談を定期的に行うなど支援を継続した。
Aさんの経過は良好で3か月後には症状は安定していた。主治医からも退院可能であると判断がなされたため、E精神保健福祉士はAさんの退院支援委員会開催の準備を行った。落ち着いてきたAさんは「会社の経営が厳しいので、医療費の負担を少しでも軽くしたい」と面談の中で話した。そこでE精神保健福祉士は、Aさんの退院後の精神科の通院医療費の負担軽減のために、「障害者総合支援法」に規定されているサービス利用を提案したところ、Aさんも是非利用したいと述べた。(問題48)
- (注) 「障害者総合支援法」とは、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
- 問題46 次のうち、この入院形態として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 任意入院
- 2 医療保護入院
- 3 緊急措置入院
- 4 措置入院
- 5 応急入院
- 問題47 次のうち、E精神保健福祉士が担っている役割として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 精神保健福祉相談員
- 2 退院支援相談員
- 3 相談支援員
- 4 退院後生活環境相談員
- 5 生活支援員
- 問題48 次の記述のうち、E精神保健福祉士が提案したサービスに関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
- 1 障害支援区分の認定を必要とする。
- 2 申請窓口は市町村である。
- 3 入院医療費も適用の対象となる。
- 4 利用は6か月が限度である。
- 5 所得にかかわらず、自己負担額は同じである。