第24回(令和3年度)精神保健福祉士国家試験午後の問題

精神疾患とその治療

問題1 次のうち、18世紀に精神障害者を鎖から解放し、人間的な処遇を提唱した人物として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ピネル(Pinel, P.)
2 呉秀三
3 クレペリン(Kraepelin, E.)
4 カールバウム(Kahlbaum, K.)
5 アルツハイマー(Alzheimer, A.)
問題2 次の記述のうち、脳の各部位の働きとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 大脳皮質は情動をつかさどる。
2 延髄は呼吸をつかさどる。
3 小脳は体温調節をつかさどる。
4 視床は食欲をつかさどる。
5 視床下部は平衡感覚をつかさどる。
問題3 Aさん(25歳、男性)は、職場でパワーハラスメントにあったことで、意欲低下や食欲低下、不眠などが続き出勤できなくなった。人事担当者は産業医及びAさんと相談し、部署を異動させたところ、Aさんの症状は7日後に改善した。
次のうち、Aさんの病名として、適切なものを1つ選びなさい。
1 境界性パーソナリティ障害
2 適応障害
3 双極性感情障害
4 病気不安症
5 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
問題4 次の記述のうち、特に誘因なく発症したうつ病の患者への、急性期における家族からの声かけとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 「早く治ってくれないと困る」
2 「仕事は辞めた方がよい」
3 「あなたはうつ病ではないと思う」
4 「旅行をして気分転換しましょう」
5 「大切なことを決めるのは後にしましょう」
問題5 Bちゃん(3歳、男児)は、同年代の子どもと一緒に遊べないことと、言葉の遅れがあるために病院を受診し、自閉スペクトラム症と診断された。お気に入りのぬいぐるみが複数あり、どこに行くにもそのぬいぐるみを持って行かないと気が済まない。帰宅すると、ぬいぐるみを決まった順番で、壁際に並べる。
次のうち、Bちゃんに認められる症状として、適切なものを1つ選びなさい。
1 こだわり
2 妄想
3 自我障害
4 分離不安
5 身体依存
問題6 次の記述のうち、予後がよいと推測される統合失調症の特徴として、適切なものを2つ選びなさい。
1 解体型の病型である。
2 緩徐に発症する。
3 若年で発症する。
4 発症に明らかな誘因がある。
5 発症してから未治療の期間が短い。
問題7 Cさん(18歳、男性)は、「部屋の中に隠しカメラがある」と3か月前から執拗{しつよう}に訴えるため、心配した両親と共に精神科を受診した。Cさんはリスペリドンを処方され、服用を始めた2日目の夕方より、「足がむずむずする」「じっとしていられないので、部屋の中を歩き回ってしまう」と強く訴えた。
次のうち、Cさんに2日目の夕方より現れた症状として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ジストニア
2 アカシジア
3 ジスキネジア
4 カタレプシー
5 ミオクローヌス
問題8 次のうち、精神分析療法に最も関係の深い概念として、正しいものを1つ選びなさい。
1 自動思考
2 治療共同体
3 無意識
4 あるがまま
5 オペラント条件づけ
問題9 30歳前後に見える男性は、意味不明の独り言を発しながら、深夜に海岸を一人で歩いていたため、警察に保護された。警察官からの、「何をしていたのか」という問いかけに、「分からない」と答えた。付き添っている人はおらず、「名前や住所は覚えていない」と言い、身元が分かるようなものは所持していなかった。精神疾患を疑った警察官が精神科病院の受診につなげた。1名の精神保健指定医が診察したところ、暴れることはなく、頭部外傷などの身体面に緊急の治療を要する病変や自殺念慮も認められなかった。本人は入院による精神科治療が必要と認めなかったが、精神障害があるため、入院治療が必要と判断された。
次のうち、この時点における男性の入院形態として、適切なものを1つ選びなさい。
1 緊急措置入院
2 措置入院
3 医療保護入院
4 応急入院
5 任意入院
問題10 アルコホーリクス・アノニマス(AA)に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 自助グループである。
2 自立支援医療(精神通院医療)の対象である。
3 心理専門職によるカウンセリングが目的である。
4 メンバーの無名性を基礎におく。
5 参加するためには医師の診断書が必要である。

精神保健の課題と支援

問題11 次のうち、ライフイベントとストレスとの相関に関する「社会的再適応評価尺度(Social Readjustment Rating Scale)」の開発者として、正しいものを1つ選びなさい。
1 セリエ(Selye, H.)
2 フロイト(Freud, S.)
3 ホームズ(Holmes, T.)
4 エリクソン(Erikson, E.)
5 キューブラー・ロス(Kubler-Ross, E.)
問題12 次のうち、著名人の自殺に関する報道の後で自殺者数が増加する現象を説明する用語として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ハロー効果
2 ウェルテル効果
3 カクテルパーティ効果
4 キャリーオーバー効果
5 ピグマリオン効果
問題13 次のうち、「DV防止法」において、配偶者からの身体に対する暴力を受けた被害者の申立てにより、配偶者に保護命令を発することができる機関として、正しいものを1つ選びなさい。
1 配偶者暴力相談支援センター
2 福祉事務所
3 裁判所
4 警察署
5 婦人相談所
問題14 次のうち、発達障害者支援法に規定されているものとして、正しいものを2つ選びなさい。
1 精神障害者保健福祉手帳の交付
2 自立支援医療費の支給
3 社会的障壁の定義
4 発達障害者支援センターの指定
5 職場適応援助者の養成
問題15 次のうち、「ストレスチェック」の実施において、厚生労働大臣の定める研修を修了することなく、かつ労働者の健康管理等に従事した経験を有することなく検査の実施者となることができる者として、正しいものを1つ選びなさい。
1 保健師
2 公認心理師
3 看護師
4 精神保健福祉士
5 理学療法士
問題16 次のうち、セクシュアリティに関する記述として、適切なものを2つ選びなさい。
1 ジェンダーは、身体的性別を指す言葉である。
2 性別違和は、DSM-5で採用された用語である。
3 性的指向は、自己の性をどのように認識しているのかを示す概念である。
4 トランスジェンダーは、生物学的・身体的性と性自認が一致しない人を表す言葉である。
5 性同一性は、人の性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念である。
問題17 次のうち、被災者の心理的変化に関して、徐々に疲労が蓄積していくとともに、被災者同士の間で強い連帯感が生まれる時期として、適切なものを1つ選びなさい。
1 茫然{ぼうぜん}自失期
2 再建期
3 幻滅期
4 無感覚期
5 ハネムーン期
問題18 次のうち、都道府県及び市町村が「精神障害者の社会復帰及びその自立と社会経済活動への参加に対する地域住民の関心と理解を深めるように努めなければならない」と条文に明記されている法律として、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健福祉士法
2 「精神保健福祉法」
3 「医療観察法」
4 「障害者総合支援法」
5 「障害者虐待防止法」
問題19 次のうち、疾患による損失生存年数と障害生存年数の合計で表される指標として、正しいものを1つ選びなさい。
1 DUP
2 ADL
3 DALY
4 QOL
5 SDGs
問題20 WHO(世界保健機関)の取組に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 国際疾病分類の改訂版では、DSM-5を採用している。
2 オタワ憲章は、障害を3次元で分類している。
3 メンタルヘルスアトラスプロジェクトは、構造化面接法を用いて世界各国における精神疾患の罹患{りかん}率を調査した研究事業である。
4 「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」は、世界の酒類の製造又は販売を行う事業者に向けた警告のための広告戦略である。
5 メンタルヘルスギャップアクションプログラム(mhGAP)は、特に中低所得国における精神・神経・物質使用の障害へのケアを拡充することを目的にしている。

精神保健福祉相談援助の基盤

問題21 D精神保健福祉士はカンファレンスにおいて、Eさん(30歳)の退院を検討するために、今後、利用可能な社会資源に関連する情報をホワイトボードに図示して説明した。Eさんは、自宅への退院に備えて宿泊型自立訓練の体験をしていた。その一方、父親との折り合いが悪いことから、Eさんは以前に支援を受けていた市の保健師にも相談し、グループホームの見学も行った。また、日中については、友人のいるコンビニエンスストアで働くか、就労プログラムを実施している就労移行支援事業所又は精神科デイケアの利用を考えている。
次のうち、D精神保健福祉士がカンファレンスでの説明において、情報を図示したツールとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 エコマップ
2 ファミリーマップ
3 ジェノグラム
4 ソシオグラム
5 タイムライン
問題22 次の記述のうち、ソーシャルワークの原理に基づく実践として、適切なものを2つ選びなさい。
1 ホームレスに至った原因を特定するため、環境要因よりも個人要因を重視し分析する。
2 住民との協働による、課題の早期発見や見守りを推し進め、事前対応型の予防的支援を展開する。
3 多機関に所属する専門職からなるチームを統括し、クライエントの生活を総合的かつ包括的に援助するように指揮する。
4 セルフネグレクトの状態にあり、援助を拒む住民には、相談窓口に来所するよう強く働きかける。
5 地域の福祉ニーズを的確に把握し、必要なサービスが不足している場合にはそれらを創出する。
問題23 次の記述のうち、ソーシャルワークの実践モデルとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 環境との交互作用に焦点を当て、適応状態を捉えるモデルを治療モデルという。
2 クライエントが語る物語に着目し、問題を定義するモデルを医学モデルという。
3 問題の原因を個人の病理現象から見いだし、それを取り除くことにより解決するモデルを生活モデルという。
4 クライエントの肯定的態度や能力に着目し、主観性を尊重するモデルをストレングスモデルという。
5 蓄積された統計データを用いて、問題の原因を特定するモデルをナラティブモデルという。
問題24 次の記述のうち、精神保健福祉士が行う地域生活支援として、適切なものを1つ選びなさい。
1 通院中のクライエントに、服薬は自己管理ではなく親に委ねるよう指導した。
2 通院中のクライエントに自炊を始めたいと相談され、社会復帰プログラムのある病院への入院を勧めた。
3 企業への就職を希望するクライエントに、就労継続支援B型事業所を紹介した。
4 闘病体験を同じ病を抱えた人に役立てたいクライエントに、ピアサポート活動を紹介した。
5 一人暮らしを希望するクライエントに、経済的なめどが立ってから相談を開始すると伝えた。
問題25 次の記述のうち、精神保健福祉士のバーンアウトを表す状況として、正しいものを1つ選びなさい。
1 初めてクライエントの家を訪問し、その生活実態を目の当たりにして、仕事を続けていく自信が揺らいだ。
2 就職後、デスクワークが多く、思っていたほどクライエントと向き合う時間を確保することができなかった。
3 同期の精神保健福祉士がクライエントとすぐに打ち解けている姿を見て、自信を失った。
4 入職1年目の精神保健福祉士が、アルコール依存症のクライエントの再飲酒、再入院に直面し、無力感を抱いた。
5 長期間、複数のクライエントの困難な状況に対応していたが、相次ぐクライエントの入院によって疲労困憊{こんぱい}になった。
問題26 次の記述のうち、精神保健福祉に関わる専門職等の役割について、正しいものを1つ選びなさい。
1 退院後生活環境相談員は、包括型地域生活支援プログラム(ACT)で訪問を行う。
2 生活保護現業員は、リワークプログラムにおいて就労に関するアセスメントを行う。
3 社会復帰調整官は、精神障害者保健福祉手帳の交付の判定を行う。
4 精神保健福祉相談員は、精神科デイ・ケアで集団生活への適応訓練を行う。
5 精神障害者雇用トータルサポーターは、職場実習先の開拓及び実施のための事業所への助言や調整を行う。
問題27 就労移行支援事業を利用していたFさんは、運送会社の配送準備業務に従事し3週間が経過した。ある日、仕事帰りに事業所に立ち寄り、担当であるG精神保健福祉士に、「ミスしないようにと考えすぎなのか緊張が続き、疲れが取れません。これからも頑張っていきますが、紙に書いて丁寧に指示するという就職前の約束が実行されないので、困っています」と話した。G精神保健福祉士は話を整理し、「私の方から人事担当者に改めて話します」と答えた。
次のうち、G精神保健福祉士の対応の基となる考え方として、適切なものを1つ選びなさい。
1 社会モデル
2 クラブハウスモデル
3 社会的目標モデル
4 医療モデル
5 相互作用モデル
問題28 次のうち、精神保健福祉士が、守秘義務よりも第三者への情報提供を優先する場合として、適切なものを2つ選びなさい。
1 外部の専門家からスーパービジョンを受ける場合
2 家族から、クライエントが面接中に話した内容を教えてほしいと依頼された場合
3 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合
4 施設従事者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合
5 外部の人から、クライエントの病名を尋ねられた場合
問題29 次の記述のうち、精神保健福祉士が行う精神障害のあるクライエントへの援助の方針として、適切なものを1つ選びなさい。
1 がんの治療を受けている親と二人で暮らすクライエントに、就労移行支援事業所の利用は控えることを提案する。
2 通院しながら子育てをするうつ病のクライエントに、ファミリー・サポート・センター事業の利用を提案する。
3 親を介護しながらアルコール依存症で通院するクライエントに、自助グループの利用をやめて介護に専念することを提案する。
4 グループホームに入居したクライエントに、これまで使っていた通所型サービスの中断を提案する。
5 障害福祉サービス事業所が判定する障害支援区分に応じたサービスを提案する。

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)

次の事例を読んで、問題30から問題32までについて答えなさい。
〔事 例〕
大規模自然災害が発生したN市保健所のH精神保健福祉士は、チームの一員として被災直後の被災地域の全戸訪問を行った。Jさん(22歳、男性)の自宅を訪問したところ、父親から、「Jは、高校卒業後に勤めた会社を半年で心身の不調を訴え退職し、ここ数年は、近所へ買物に外出する以外は自室にて過ごすようになっていた。被災後からは近所の手伝いも率先して行い、表情も明るくなり、近所の人からも本当に助かっていると言われていた。また具合が悪くならなければよいが」とJさんを心配する話を聞いた。そこで、チーム内でJさんについての情報を共有し検討した結果、継続したフォローアップが必要であると判断され、H精神保健福祉士がJさんを担当することになった。(問題30)
全戸訪問から8か月後、Jさんの父親が来所して面接することになった。面接で父親は、「Jは、手伝いをきっかけに紹介された仕事に就くことになり、家族みんなでとても喜んだ」と話した。しかし、その後沈黙が続いたため、H精神保健福祉士が尋ねると、疲れ切った様子で、「実は3か月前からJの具合が急に悪くなって」と話し始めた。「Jは、元気に働き始めましたが、そのうち帰宅しても話もせず、すぐに自室に籠もってしまい顔を合わせないことが多くなりました。また、時折、自室から嗚咽{おえつ}が聞こえてきたため心配して声をかけましたが、大丈夫だと返答するので、そっとしておきました。そして1か月前から、出勤時間になっても自室から出てこない日が続き、現在は欠勤が続いています。あなたから何回か訪問の提案をいただいていましたが、いつもJは私たちに断れと言っていたんです」と語った。(問題31)
父親の話を聞いたH精神保健福祉士は、Jさんの家族との面接を継続するだけでなく、Jさんに対して介入を行う必要性を感じた。(問題32)

問題30 次の記述のうち、この時点において、チームでJさんについての情報を共有し、継続したフォローアップが必要だと判断した理由として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Jさんが、両親の期待に応えようとしていると考えられたため。
2 Jさんが、他者との関係を持つと調子を崩すと考えられたため。
3 Jさんが、経済的な困難を訴える可能性が考えられるため。
4 Jさんが、チームをまとめるリーダーになる可能性が考えられるため。
5 Jさんが、無理をして頑張っている状態だと考えられたため。
問題31 次の記述のうち、この時点の面接におけるH精神保健福祉士のJさんの家族に対する支援として、適切なものを2つ選びなさい。
1 家族の自尊心を高めるために、これまでの対応を高く評価する。
2 家族の認知のゆがみを修正するように促す。
3 父親の話を受容する。
4 Jさんの病気や障害について説明をする。
5 Jさんの生活技能を向上させるための訓練を行うことを提案する。
問題32 次の記述のうち、この時点でH精神保健福祉士が行う援助として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Jさんの両親に、Jさんに宛てた手紙を渡してもらうようお願いする。
2 市内にある精神科クリニックの医師に、往診を依頼する。
3 精神保健福祉センターに、訪問を依頼する。
4 Jさんの様子を確認してもらうため、勤務先の上司に訪問を依頼する。
5 Jさんの両親に、一時的にJさんと離れて生活することを提案する。

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題2)

次の事例を読んで、問題33から問題35までについて答えなさい。
〔事 例〕
Kさん(39歳)は、夫のLさん(43歳)と小学生の子ども(9歳、女児)の3人家族である。結婚して以来、Lさんは、Kさんの交友関係を絶たせ、最低限の食費のみを渡し、家計を細かく管理した。また、Lさんの思い通りに家事ができていないとKさんに殴る、蹴るなどの暴力を振るった。今回、Kさんを守ろうとした子どもにも暴力を振るったため、これを機にKさんは子どもを連れて家を離れ、福祉事務所を通じて母子生活支援施設に入所した。入所初期のKさんの話は混乱していたが、担当のM母子支援員(精神保健福祉士)は丁寧に対応し、「外から聞こえる足音が夫のような気がして怖い」「夫から離れたいけど無理かもしれない」「子育てのことも負担」ということを聞き取った。(問題33)
施設でのKさんはLさんに強いられていた生活のルールを強迫的に守ろうとし、言うとおりにしないとLさんにされたように子どもを叱責した。また、職員や他の入居者の言動を被害的に捉えて、相手を攻撃することが多かった。曖昧な対応をする職員には、「いい加減なことを言わないでほしい」と強く責めたてるため、ケース会議でKさんのことを取り上げた。(問題34)
Lさんは、A相談員(精神保健福祉士)が対応する市役所の男性相談窓口を訪れ、「暴力を振るっていた父のようになりたくなかった。理想の家庭を作りたくて、家事や育児も言うとおりにできない妻を導いてきたつもり。それなのに妻は子どもを連れて出て行った。妻だけでなく今回は子どもにも手を出してしまったので、自分でも変わらないといけないと思うが、どうしたらよいか分からない」と話した。A相談員は、「自分の行動についてなんとかしたいと思っているのですね。自分の行動を整理してみませんか」と伝えて、県内で開始されていたNPO法人が実施している事業・活動を紹介した。(問題35)

問題33 次のうち、この時点でM母子支援員が優先して取り組むKさんへの支援として、適切なものを2つ選びなさい。
1 地域生活に向けた就労先や住居の検討
2 生活費を請求するための弁護士の紹介
3 精神的安定を目的にした相談面接
4 学校や行政との関係者会議の開催
5 夫が訪ねてきた場合の安全体制の確保
問題34 次の記述のうち、ケース会議で共有する支援の方向性として、適切なものを1つ選びなさい。
1 責められた職員のKさんへの態度を指摘し、自己覚知させる。
2 トラウマの影響について学び直し、Kさんへの理解を深める。
3 Kさんの苦情について、画一化した対応マニュアルを作る。
4 施設生活にはなじめないので、他の住まいを検討する。
5 境界性パーソナリティ障害と考え、精神科診療所への受診につなげる。
問題35 次のうち、この時点でA相談員がLさんに紹介した事業・活動として、適切なものを1つ選びなさい。
1 DV加害者プログラム
2 リラクゼーション法
3 夫婦同席カウンセリング
4 イモーションズ・アノニマス(EA)
5 親支援プログラム

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

問題36 Bさん(30歳、女性、統合失調症)は、週に4日、配送センターで仕分業務に従事して3年目となる。利用する障害者就業・生活支援センターのC就労支援担当者(精神保健福祉士)を訪れ、「配送センターの所長に、繁忙期は勤務日数を増やし、1日8時間勤務できないと雇用継続は難しいと言われた。これ以上働くと体調が不安で、通院する時間もなくなる。仕事は辞めたくない。でも、怖くて何も言えなかった」と訴えた。そこで、C就労支援担当者はBさんとの合意を得て、配送センターを訪問して所長に話をした。
次のうち、この場面でC就労支援担当者が果たした役割として、正しいものを1つ選びなさい。
1 インフォームドコンセント
2 アドボカシー
3 リスクマネジメント
4 セカンドオピニオン
5 アカウンタビリティ
問題37 次の記述のうち、精神科リハビリテーションにおけるアプローチの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 IMR(Illness Management and Recovery)は、支援者が症状を管理する。
2 IPS(Individual Placement and Support)は、本人の希望に基づいて、雇用を目標に支援する。
3 家族心理教育は、家族病理に焦点を当てて治療を行う。
4 包括型地域生活支援プログラム(ACT)は、グループワークを通して回復を目指す。
5 ピアサポートは、経験的知識よりも精神保健福祉の専門的知識を用いる。
問題38 次の記述のうち、精神科専門療法に関する説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 急性期の入院患者に対する作業療法は、生活管理技能の改善を主目的とする。
2 社会生活技能訓練(SST)の基本訓練モデルは、あらかじめ獲得すべき技能が設定されている。
3 アルコール専門外来で行う集団精神療法は、各回の自由参加を原則とする。
4 うつ病に対する認知行動療法は、捉え方の偏りを修正して問題解決を促す。
5 統合失調症に対する心理教育は、精神分析療法を用いて展開する。
問題39 次の記述のうち、精神保健福祉士が連携する職種の役割として、適切なものを1つ選びなさい。
1 公認心理師は、不安や抑うつを訴える患者のストレス反応の評価を行う。
2 薬剤師は、不安で眠れない患者への、睡眠導入剤の処方を行う。
3 作業療法士は、食事摂取カロリーが気になる患者に、献立の作成を行う。
4 介護支援専門員は、転倒を繰り返す患者に、歩行機能の訓練を行う。
5 医師は、障害福祉サービスの利用を希望する患者への、申請書の作成を行う。
問題40 次の記述のうち、相談援助過程におけるインターベンションの説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 相談援助過程を振り返り、契約の終了に向けて準備する。
2 援助計画の進捗状況と達成状況を評価する。
3 個々のニーズの充足に向けて援助者や援助機関が各々の役割を遂行する。
4 課題分析で明らかになったニーズを充足する社会資源を選定する。
5 クライエントのニーズや環境に関する情報を包括的・総合的に精査する。
問題41 U精神科デイケアを利用するDさんは、デイケア担当のE精神保健福祉士に相談した。「先日、隣家の玄関前に空き缶が落ちていました。その横を通り過ぎたところ、いきなり隣人から、『空き缶を捨てたのはお前か』と怒鳴られました。その時は、『違います、私じゃないです』と答えましたが、精神障害者だからそう思われたのですかね。誤解なのに」と唇を噛{か}みしめながら訴えた。E精神保健福祉士は、「Dさんが捨てた物ではないのに、誤解されて、悔しかったですね」と話したところ、Dさんは小さくうなずいた。
次のうち、この場面でE精神保健福祉士が用いた面接技法として、正しいものを1つ選びなさい。
1 励まし
2 要約
3 言い換え
4 繰り返し
5 感情の反映
問題42 次の記述のうち、発達障害のある学生に対して、キャンパスソーシャルワーカー(精神保健福祉士)が行う支援として、適切なものを1つ選びなさい。
1 履修登録の仕組みの理解が難しい場合、本人の代わりに履修登録をする。
2 計画的な課題提出が難しい場合、提出期限を変更するよう教員に依頼する。
3 書字障害がある場合、書き取りの練習を繰り返すように助言する。
4 授業中に照明がまぶしいと感じる場合、サングラスを使用できるように大学と調整する。
5 教員からの質問の意味が分からない場合、自分なりに解釈してよいと伝える。
問題43 V地域活動支援センターのF精神保健福祉士は、一人暮らしをしている利用者を対象としてグループワークを始めることとした。F精神保健福祉士は、開始に当たり、参加するメンバーと個別に面接を行った。最近通い始めたGさんは、「まだ、みんなになじめていないので緊張します」と話した。F精神保健福祉士は、Gさんがグループに対して期待することや不安に感じることを聞くとともに、一人暮らしの様子を聞きながら、Gさんの考えや性格傾向についても把握を試みた。
次のうち、この時点でF精神保健福祉士が活用した援助技術として、適切なものを1つ選びなさい。
1 アイスブレイク
2 集団規範の形成
3 感情転移の活用
4 個人体験の分かち合い
5 波長合わせ
問題44 次の記述のうち、相談援助活動におけるコンサルテーションに関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 コンサルテーションは、コンサルティの専門性に関する支援の振り返りを促すことである。
2 コンサルタントは、助言した結果に責任を負う。
3 コンサルティは、取り上げる問題に応じてコンサルタントを選定する。
4 コンサルタントは、監督・指導する管理的機能を持つ。
5 コンサルティは、受けた助言を採用する際に、コンサルタントの許可を得る。
問題45 次のうち、相談援助機関に配置される職員として、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童相談所の精神保健福祉相談員
2 就労移行支援事業所の相談支援専門員
3 地域活動支援センターⅠ型の精神保健福祉士
4 ひきこもり地域支援センターの児童福祉司
5 障害者就業・生活支援センターの障害者職業カウンセラー
問題46 次の記述のうち、精神障害がある者のリカバリーについての説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 全ての人が同じリカバリーの過程を経る。
2 本人が自由に挑戦できるよう、支援者が責任を負う。
3 本人の障害の部分に焦点を当てる。
4 希望はリカバリーを支える原動力となる。
5 身体的状況を切り離し、精神的な回復を図る。
問題47 次の記述のうち、精神障害者のケアマネジメントにおけるリハビリテーション型モデルの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 利用者に社会資源をあっせんし、双方を結びつける機能を中心とする。
2 多職種による訪問支援チームが、24時間対応をする。
3 利用者との個別の治療関係に基づき、心理的アプローチを重視する。
4 環境調整を行いながら、能力障害に焦点を当て、生活技能の獲得を支援する。
5 利用者とその環境の潜在能力を引き出し、セルフケア能力を高める。
問題48 グループホームを運営しているH精神保健福祉士のところへ、近所でアパート経営をしているJさんが相談に来た。内容は、アパートの空き家対策としてのグループホームへの転用と、それによる利用者と地域住民とのトラブルの心配についてであった。H精神保健福祉士はJさんとの話から、不動産関係者が精神障害者について理解すれば、空き家をグループホームとして活用でき、精神障害者が地域住民の一員として溶け込んで、コミュニティケアが進むのではないかと考えた。そこでH精神保健福祉士は、自身の参加している支援協議会でアパート経営者や不動産関係者向けの精神障害者支援セミナーの開催を提案した。
次のうち、H精神保健福祉士が提案する際に意図した精神障害者支援の理念として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルインクルージョン
2 ソーシャルロール・バロリゼーション
3 ソーシャルジャスティス
4 ソーシャルイクオリティ
5 ソーシャル・コンストラクショニズム

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題1)

次の事例を読んで、問題49から問題51までについて答えなさい。
〔事 例〕
P市に住むKさん(30歳、女性)は、学生時代に通院していた精神科病院をL君(5歳、男児)と共に受診した。診察に際してM精神保健福祉士がインテーク面接を行った。Kさんは、「5年前に結婚し、すぐにLを出産したが、2年半前に離婚した。働きながらLを育ててきたが、3か月程前から不眠が続き、仕事に行けなくなり、先月、突然解雇を言い渡された。もう生きていてもしょうがない」とうつろな表情で話した。M精神保健福祉士は、Kさんの来院をねぎらい、傾聴した。同時に、Kさんの手首に巻かれたハンカチから血がにじんでいることや、L君は5歳児にしては小さく痩せていること、不衛生な身なりで表情が乏しいことが気になった。(問題49)
診察の結果、Kさんには自傷行為が認められ、希死念慮が強く、入院治療が必要と判断された。当初Kさんは、「身寄りもなく、Lを残して入院できないしお金もない」と入院に同意しなかった。しかし、主治医より入院の必要性について説明され、M精神保健福祉士がL君への支援と、経済的な支援について説明すると、ほっとした表情を浮かべ入院に同意した。Kさんの入院と同時に、L君は一時保護となった。
入院後、KさんはM精神保健福祉士との面談で、「酒飲みの父親は私に頻繁に暴力を振るったが、母親は助けてくれなかった」「離婚した夫も、酒を飲むと私とLに暴力を振るった」「離婚後、Lを厳しく叱り、世話をできないことが続いた。気付くとリストカットを繰り返していた」と語った。M精神保健福祉士は、誰にも相談できずに苦しんできたKさんに寄り添い、傾聴した。(問題50)
一時保護所のA児童福祉司(精神保健福祉士)は、L君が声かけにほとんど反応せず、言語発達の遅れがみられるため、P市と連携してL君の養育環境の整備を開始した。M精神保健福祉士は、Kさん及び主治医、A児童福祉司と共にKさんの退院後の生活について話し合う場を設けた。A児童福祉司が、母親と暮らすことを希望するL君の意向を伝えると、Kさんは、「退院してLと一緒に暮らしたいが自信がない」と語った。(問題51)

問題49 次の記述のうち、この時点で、必要な情報を収集するために、M精神保健福祉士が行う質問の内容として、適切なものを2つ選びなさい。
1 Kさんへ 「L君がいるのになぜ離婚したのですか」
2 L君へ 「何をしているときが楽しいですか」
3 Kさんへ 「怪我をしているようですが、どうしましたか」
4 L君へ 「片足でケンケンできますか」
5 Kさんへ 「L君を毎日お風呂に入れていますか」
問題50 次の記述のうち、この時点で、M精神保健福祉士がKさんにかけた言葉として、適切なものを1つ選びなさい。
1 「過去に受けた暴力は、時間の経過とともに解決されます」
2 「あなたのどんな行動が、離婚した夫をそんなに怒らせたのでしょうか」
3 「そういうことはよくあることなので、あまり気にしない方がいいですよ」
4 「今の状況をあなたが変えようと思わなければ、私は何もできないのです」
5 「自分を傷つけたくなるほどつらかったのですね。今回のように話ができるといいですね」
問題51 次の記述のうち、この話合いの場で提案されたKさん及びL君への支援の方針として、適切なものを1つ選びなさい。
1 L君の発達支援のために、居宅訪問型児童発達支援を利用する。
2 L君の安全確保のために、里親制度を活用する。
3 Kさん親子の経済的安定のために、就職活動を開始する。
4 Kさん親子をいつでも支援できるように、関係機関との連携体制を構築する。
5 Kさんが過去の体験に向き合えるように、入院治療の継続を調整する。

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題2)

次の事例を読んで、問題52から問題54までについて答えなさい。
〔事 例〕
B精神保健福祉士は、社員のメンタルヘルス対策の強化に伴い、大手製造メーカーの健康相談室に新たに採用された。ある日、健康相談室に製造管理課のC課長が欠勤が続く部下のことで相談に訪れた。C課長の話は、「部下のDさんは、責任感が強いため、多くの仕事を引き受けていた。無理をさせてしまった。Dさんに電話すると、『気持ちが落ち込み、眠れない。出勤できない自分が不甲斐{ふがい}ない』と自分を責めており、対応に困っている」とのことだった。B精神保健福祉士はC課長が心配している気持ちを聞き、Dさんへの対応について助言した。(問題52)
その後、C課長は、「Dさんは仕事を休んでいるものの、体調は落ち着いてきたようだ」とB精神保健福祉士に報告した。また、C課長は、「実は、他にも心配な部下が何人かいる」「部下たちは仕事の負担が多くても、無理して頑張っているように思う」「取引先の納期の意向に沿えないことで営業課に批判され、部下たちの努力が社内で評価されていないのが悔しい」と語った。B精神保健福祉士は、この状況を人事担当者に伝え、ストレスチェックの集団分析の結果、製造管理課は総合健康リスクが高いことを確認した。同課は高ストレスの傾向にあり、仕事の量的負担が高く、互いを気遣っているものの同僚からの支援は受けにくい傾向であることが分かった。そして、人事担当者から高ストレスの要因となる職場環境の改善について取り組むよう依頼を受けた。B精神保健福祉士は、人事担当者やC課長と検討し、改善に向けた具体策に取り組んだ。(問題53)
B精神保健福祉士は、取り組む中で、製造管理課の社員の多くは良い製品を作ることを考え、妥協を許さない仕事ぶりが顕著であると感じた。そして、B精神保健福祉士は、今の問題を解決するための一助として、職場環境の改善に加えて、社員一人ひとりがよりよい対処法を身に付けるための基礎的な研修が必要と考え、人事担当者とC課長の了承を得て、業務内で製造管理課の社員が参加できるように研修企画を進めた。(問題54)

問題52 次の記述のうち、この時点での、B精神保健福祉士のC課長に対する助言として、適切なものを1つ選びなさい。
1 「半日から出社することを伝えてみませんか」
2 「別の部署に移ることを提案してみてはどうですか」
3 「経済的な心配があれば、障害年金の手続を伝えてはどうですか」
4 「産業医への相談を勧めてみませんか」
5 「健康診断を受けるように勧めてはどうですか」
問題53 次の記述のうち、B精神保健福祉士が取り組んだこととして、適切なものを2つ選びなさい。
1 取引先の意向に沿えなかった理由を社内に公表する。
2 C課長に高ストレスの要因を改善する計画の作成を一任する。
3 製造管理課の業務量を可視化し、課内で共有する。
4 休日に製造管理課の社員全員が集まる親睦会を開催する。
5 同僚に対する気遣いを言葉にして伝え合う場を設ける。
問題54 次のうち、B精神保健福祉士が企画した研修の内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 労働時間と疲労度のセルフチェック
2 社員のメンタルヘルス不調の三次予防
3 職場におけるハラスメントの理解
4 自分の要求を抑えて、職場環境に適応するよりよい対処方法
5 精神疾患のある社員への合理的配慮の具体例

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題3)

次の事例を読んで、問題55から問題57までについて答えなさい。
〔事 例〕
Eさん(33歳、女性)は、大学卒業後に仕事をしていた27歳の時に統合失調症と診断された。一時は入院していたが、現在は通院を続けながら一日中自宅で過ごしている。Eさんは今後の生活が心配になり、主治医に話したところ、精神科デイケアの利用を勧められた。
デイケア担当のF精神保健福祉士による初回面談で、Eさんは、「一日中家にいて、いろいろ考えて不安に押しつぶされる感じがする。家族から仕事はどうするのかと聞かれると、焦りが強くなる。今の生活を変えたいけれど、新しい場所でうまくやれるか、不安が先に立つ。まずは生活リズムを整えたい。将来的には仕事も考えたい」と話した。F精神保健福祉士はEさんの気持ちを受け止め、週1日のデイケアを複数回体験することを提案した。(問題55)
体験後にEさんは、「同世代の人がいて、自分と同じように悩んでいる人もいる。今後も継続して利用したい」と話し、週3日のデイケア利用を開始した。
1か月が過ぎた頃、EさんからF精神保健福祉士に、「デイケアに通い始めて、規則正しい生活にはなった。でも、多くのメンバーと話して仲良くなりたい、次のステップにつなげたいと頑張れば頑張るほど、うまくいかなくて焦りが強くなる。疲れてるのかな。どうしたら自然にできるんだろう」と相談があった。相談を受け、F精神保健福祉士はEさんの援助方針を検討するスタッフ会議を開催した。(問題56)
利用から半年が過ぎ、グループ活動の企画に取り組むなど、生き生きとした姿が少しずつ見られるようになった。F精神保健福祉士はモニタリング面談で、「これまでの活動を振り返り、感じていることを教えてください」と尋ねた。Eさんは、「メンバー同士で支え、支えられることで、新しい自分が生まれてきた感じ。少しずつ希望が見えてきた。これからも迷ったり、悩んだりすると思うけど、今はちょっとだけ前向きになれた自分を褒めてあげたい」と話してくれた。(問題57)

問題55 次の記述のうち、この時点でF精神保健福祉士が行うこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 Eさんの支援計画を立案する。
2 外来担当の看護師からEさんの受診や生活の情報を得る。
3 就労経験のあるデイケア利用者からEさんへ就職活動体験談を話してもらう。
4 Eさんの住む地域を担当する民生委員からEさんの情報を得る。
5 就労移行支援のためのチェックリストを用いて、Eさんの作業能力を評価する。
問題56 次の記述のうち、このスタッフ会議でF精神保健福祉士が提案したこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 「Eさんと家族が希望している就労プログラムを勧めてみましょう」
2 「これまでどおり生活リズム改善を主目標にすすめましょう」
3 「レクリエーションの司会進行をお願いしてみましょう」
4 「疲労は再発につながるので、デイケアを休むことを助言しましょう」
5 「Eさんに声かけして見守りつつ、少人数活動への参加を促してみましょう」
問題57 次のうち、F精神保健福祉士が、Eさんの語りから評価した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 生活技術の獲得
2 疾病や障害に対する正しい知識の獲得
3 役割モデルの獲得
4 自己効力感や自己有用感の向上
5 社会改革に向けた意識の醸成

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題4)

次の事例を読んで、問題58から問題60までについて答えなさい。
〔事 例〕
Gさん(50歳、男性)は、両親と農業を営んでいた28歳の時に統合失調症を発症した。通院や服薬が不規則になることがきっかけで病状が悪化し、数回の入退院を繰り返している。今回の入院が3年と長くなったのは、病状が安定するまでに時間を要したり、父親にがんが見つかって、母親がその看病や介護に追われたことも重なったからである。
H精神保健福祉士は、Gさんが入院している病棟に異動してきたばかりであり、前任者から、「自宅では母親が一人で暮らしている」と申し送りを受けた。そこで、H精神保健福祉士は母親からGさんの今後についての考えを聞くことにし、面会に来院した際に面談した。母親は、「今まではGの病気が悪くなると、夫が何とかその場を収めて病院に連れて行っていた。でも今、夫は他界し、遠方にいるGの弟は疎遠なので頼れない。もし家でGの病気が悪くなったら、私だけでは不安がある。でも、今は病状が落ち着いているし、Gが希望すれば家に帰ってきてよいとも思っている」と話した。そこで、H精神保健福祉士はGさんと面接したが、Gさんは、「退院したくない、ここにいる」と素っ気なく発言して視線を外した。(問題58)
その2か月後、H精神保健福祉士は、病棟スタッフと退院支援活動を行うこととし、Gさんや入院患者数名に声をかけ、週に一度退院に向けて活動するグループを作った。グループ活動を開始して1か月後、H精神保健福祉士は、入院経験があり、地域活動支援センターを利用しているJさんにゲストとして参加してもらった。(問題59) その後、Gさんの退院が決まり、H精神保健福祉士は母親と面談した。母親は、「Gが家に帰ってきても、食事の支度や洗濯などは何とかなる。でも、Gが自分できちんと薬を飲み、再発せずに規則正しく生活を送れるかどうかが不安。何か手助けしてくれるものはないだろうか」と話した。(問題60)

問題58 次の記述のうち、この時点で、H精神保健福祉士が行う支援として、適切なものを1つ選びなさい。
1 主治医にGさんの入院継続の希望を代弁する。
2 Gさんとの面接回数を増やす。
3 プライバシーを尊重し、病棟のスタッフにはGさんとの話の内容を秘密にする。
4 Gさんと母親に、一緒に家族会に参加するよう促す。
5 Gさんの弟に退院を勧めるよう手紙を送る。
問題59 次の記述のうち、この時点で、H精神保健福祉士がJさんに期待した役割として、適切なものを1つ選びなさい。
1 退院後の生活が想像できるような話をしてもらう。
2 病院で依存的な生活を続けないよう助言してもらう。
3 利用できる障害福祉サービスの手続について説明してもらう。
4 家族と経済的援助の約束を交わすよう促してもらう。
5 銀行のキャッシュカードの使い方を教えてもらう。
問題60 次のうち、この時点において、H精神保健福祉士がGさんの母親に紹介した制度として、適切なものを1つ選びなさい。
1 居宅介護
2 精神科訪問看護
3 行動援護
4 日常生活自立支援事業
5 障害支援区分の認定調査

精神保健福祉に関する制度とサービス

問題61 精神医療審査会に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 医療保護入院者は審査の対象外である。
2 精神科病院の管理者に入院中の者の退院を命じることができる。
3 委員には精神障害者の保健又は福祉に関し学識経験を有する者が含まれる。
4 委員の任期は5年である。
5 入院中の者の電話での退院請求を審査することができる。
問題62 次のうち、障害者基本法に規定されている事項として、正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県障害者計画に関する合議制の機関の設置
2 障害福祉計画の策定
3 高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業の展開
4 都道府県障害者権利擁護センターの業務
5 難病相談支援センターの設置
問題63 次の記述のうち、「障害者総合支援法」における自立支援医療(精神通院医療)の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 月の負担上限額を超えない場合の自己負担は、原則2割である。
2 受給者証の有効期間は、原則2年間である。
3 精神通院医療の要否に関する判定を行うのは、居住地の市町村である。
4 所得にかかわらず自己負担の上限は、一律である。
5 支給認定の申請書は、市町村に提出する。
問題64 次の記述のうち、健康保険法における入院時生活療養費の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 特定長期入院被保険者が対象である。
2 一般病床に入院中の者が対象である。
3 食費と居住費の全額が給付される。
4 入院するための移送費が含まれる。
5 高額療養費の算定の対象である。
問題65 Kさん(42歳)は、17歳の時に統合失調症と診断された。その後、現在まで精神科診療所への通院を続けている。大学を卒業後に初めて就職をしたものの、体調を崩し仕事は長続きしなかった。その後も、何度か就職するも病状が悪化して半年も経たずに退職することを繰り返していた。Kさんは直近の2年間は働いておらず、親亡き後の生活における経済的不安を抱えるようになった。そのことを知った通院する精神科診療所の精神保健福祉士は、Kさんが受給できる可能性のある障害者に対する経済的な支援制度の申請を提案した。
次のうち、精神保健福祉士がKさんに申請を提案したものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 障害基礎年金
2 障害厚生年金
3 障害手当金
4 特別障害者手当
5 特別障害給付金
問題66 次のうち、仮釈放の許否決定の権限を有する機関として、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方裁判所
2 地方検察庁
3 保護観察所
4 地方更生保護委員会
5 刑務所
問題67 「医療観察法」における地域処遇に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方裁判所は、6か月ごとに通院処遇の継続の確認を行う。
2 指定通院医療機関は、対象者自身で決めることができる。
3 担当の精神保健参与員は、日常生活における相談に応じる。
4 指定通院医療機関での通院医療費は、「障害者総合支援法」における自立支援医療の対象となる。
5 対象者本人は、原則として保護観察所が主催するケア会議に出席して意見を述べることができる。
問題68 次の記述のうち、「医療観察法」における社会復帰調整官に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 通院による処遇終了が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
2 通院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
3 当初審判中の者に対して、生活環境の調整を行う。
4 入院による処遇が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
5 入院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
問題69 次のうち、社会調査における無作為化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)に関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。
1 質的調査として実施される。
2 対象者の無作為抽出が前提条件である。
3 対象者が二つの群に無作為に割り付けられる。
4 一つの群の繰り返し測定を行う調査法である。
5 理論的サンプリングが行われる。

(精神保健福祉に関する制度とサービス・事例問題)

次の事例を読んで、>問題70から問題72までについて答えなさい
〔事 例〕
Lさん(39歳、女性)は、統合失調症の患者である。身寄りのないLさんは、働きながら一人暮らしをしていたが、仕事上のストレスから32歳で発症し、精神科病院へ入院となった。6か月の入院治療の結果、陽性症状は落ち着き、一人暮らしを再開することになった。
ある日、通院する精神科病院のM精神保健福祉士は、「頑張ってはいるけれど、毎日の家事がとても大変です」とLさんから相談を受けた。話を聞くと、陰性症状としての意欲の低下が著しく、身の回りのケアに困難がある様子がうかがえた。生活状況の確認のためLさんの部屋を訪れると、室内はひどく散らかっており、食事内容も偏っているようであった。M精神保健福祉士は、W指定特定相談支援事業者を紹介し、Lさんは「障害者総合支援法」におけるホームヘルパーによる調理や洗濯・掃除など家事の援助・相談が受けられる制度を利用し始めた。(問題70)
しばらく安定した生活をしていたLさんであったが、38歳の時、通院している病院の定期的な血液検査の結果、糖尿病が進行していることが明らかになった。これ以上の悪化を予防するため健康管理の必要性を感じたM精神保健福祉士は、Lさんと相談の上、主治医の指示を受けた訪問看護ステーションの看護師が自宅に訪問するサービスの利用を支援した。(問題71)
ホームヘルパーと看護師による訪問を受けるようになったLさんであったが、次第に戸惑いの表情を見せるようになった。心配したM精神保健福祉士が話を聞くと、「私はできれば働きたい。でも訪問してくれる人や主治医は、口々に違うことを言う。私はどうしたらいいのか分からなくなってきた」とLさんは訴えた。本人の意向に基づく支援内容の検討の必要性を感じたM精神保健福祉士は、その状況をW指定特定相談支援事業者に報告した。そこでW指定特定相談支援事業者は、支援方針を調整するため本人を含めた関係者が参加するケア会議を開催した。(問題72)

問題70 次の記述のうち、Lさんが利用し始めた制度の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 訓練等給付に位置づけられる。
2 利用に当たり障害支援区分の判定は不要である。
3 サービスの利用者負担は、所得によらず一律である。
4 給付費は国が原則として2分の1を負担する。
5 国の裁量的経費に位置づけられる。
問題71 次のうち、Lさんに提供されるサービスの根拠となるものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険制度
2 地域生活支援事業
3 医療保険制度
4 無料低額診療事業
5 地域相談支援
問題72 次のうち、この時の活動に対してW指定特定相談支援事業者に支給されるものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 生活扶助費
2 計画相談支援給付費
3 介護給付費
4 訓練等給付費
5 市町村特別給付

精神障害者の生活支援システム

問題73 次のうち、「障害者総合支援法」に基づくサービスに関する記述として、正しいものを1つ選びなさい。
1 共同生活援助(グループホーム)は、介護給付に位置づけられている。
2 福祉ホームは、自立支援給付に位置づけられている。
3 住宅入居等支援事業(居住サポート事業)の実施主体は、都道府県である。
4 行動援護は、外出時において視覚障害のある障害者に同行し、移動の援護を行う。
5 自立訓練(生活訓練)の申請には、サービス等利用計画案の提出が求められる。
問題74 次のうち、精神障害者の就労を支援する機関に配置が規定されている職名として、適切なものを1つ選びなさい。
1 公共職業安定所(ハローワーク)の精神障害者雇用トータルサポーター
2 就労継続支援A型事業所の障害者職業カウンセラー
3 地域活動支援センターのサービス管理責任者
4 地域障害者職業センターの就労支援員
5 ジョブカフェの職業指導員
問題75 次の記述のうち、諸外国における精神保健福祉に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 アメリカでは、精神科病院の新設を禁止する法律第180号が制定された。
2 イタリアでは、「ついに闇からの脱出」が政府から発表された。
3 ニュージーランドでの当事者活動がクラブハウスモデルの起源である。
4 オーストラリアが起源となって、アンチスティグマプログラムとして「Open the Door」が発案された。
5 韓国では、精神保健福祉に関わる専門職として、精神健康専門要員が位置づけられている。
問題76 指定特定相談支援事業者に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村が事業者を指定する。
2 生活が一時的に困難となった者を対象とした入所施設の運営を行う。
3 生活福祉資金の貸付けを行う。
4 地域定着支援を行う。
5 居宅サービス計画の作成を行う。
問題77 行政機関における精神保健福祉業務に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 保健所は、成年後見制度利用支援事業の利用申請の窓口業務を担う。
2 保健所は、救護施設への入所措置に関する業務を担う。
3 保健所は、市町村が実施する精神障害者に対する施策の技術的な支援を行う。
4 精神保健福祉センターは、地域活動支援センター機能強化事業を実施する。
5 精神保健福祉センターは、精神障害者保健福祉手帳の申請の受理を行う。

(精神障害者の生活支援システム・事例問題)

次の事例を読んで、問題78から問題80までについて答えなさい。
〔事 例〕
Aさん(30歳、男性)は、21歳の時に統合失調症と診断され、母親と二人で住む市内にあるX精神科病院に入院した。しばらくして症状はようやく落ち着いたが、母親は自宅への退院に難色を示し、他の退院後の受入先も確保できず退院の話は進まなかった。そのうちAさんの退院意欲が減退したこともあり、入院は長期化した。
Aさんは28歳の時、地域で生活する精神障害当事者と対話できるX精神科病院内のプログラムに参加した。そこでAさんは退院意欲が喚起され、病院のB精神保健福祉士に、「退院して自宅に戻りたい」と相談を持ちかけた。B精神保健福祉士は、Aさんとの面接に加えて母親との面接を設定した。面接で母親は、「病気のことがよく分からないし、また入院前の、あの大変な状況に戻っても対応できる自信がない」と語り、自宅への退院に後ろ向きであった。B精神保健福祉士は、家族を対象に専門家が実施するX精神科病院内の家族の感情表出に着目したプログラムへの参加を勧めた。(問題78)
プログラムへの参加を通して、母親はAさんの自宅への退院に前向きになり、様々な人の支援を受けながらAさんは自宅へ退院した。しかし退院後間もなく、母親は体調を崩して1週間ほど入院となり、自宅でAさんの身の回りの世話をできる人がいなくなった。Aさんは生活能力の低下もあいまって心細さを強く訴えるようになったため、「障害者総合支援法」に規定される、短期間の入所により食事や入浴の提供などを行うサービスを利用することとした。(問題79)
母親の退院後しばらくして、Aさんは自宅に戻った。B精神保健福祉士の勧めでY地域活動支援センターに通い、徐々に地域での生活を楽しむようになった。Y地域活動支援センターでは、米国で精神障害当事者が開発したリカバリーに向けたプログラムが行われていた。入院中に知り合ったCさんに誘われてAさんもそのプログラムに参加した。そこで、自分のこれからの人生を考えられるようになった。(問題80)

問題78 次のうち、Aさんの母親が参加したプログラムとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 心理教育
2 社会生活技能訓練(SST)
3 包括型地域生活支援プログラム(ACT)
4 ピアカウンセリング
5 森田療法
問題79 次の記述のうち、Aさんが利用したサービスの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 利用者の外出時における移動中の介護を行う。
2 保健所が利用申請の窓口である。
3 夜間もサービスを提供する。
4 訓練等給付に基づくサービスである。
5 定期的な巡回訪問を実施する。
問題80 Aさんが参加したプログラムに関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 「私たちは一人ぼっちではない(We are not alone)」を合言葉とした。
2 精神障害当事者が中心となって実施する。
3 支援者と共同で創出した働く場が起源である。
4 困難な時の対処方法について、プランをあらかじめ作成する。
5 匿名での参加が原則である。
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