第23回(令和2年度)精神保健福祉士国家試験午後の問題

精神疾患とその治療

問題1 次のうち、摂食、体温、情動の調節に関わっている中枢神経の部位として、正しいものを1つ選びなさい。
1 橋
2 中脳
3 小脳
4 視床
5 視床下部
問題2 Aさん(68歳、男性)は脳梗塞の既往がある。日常生活は支障なく、自立していた。慢性腎不全の治療で入院中、3日前から38℃の発熱があり昨夜に解熱鎮痛薬を服用したところ、出勤すると言って深夜に着替えて出掛けようとした。今朝は傾眠状態である。
次のうち、この患者に疑われる疾患又は病態として、適切なものを1つ選びなさい。
1 急性ストレス反応(急性ストレス障害)
2 身体症状症(身体表現性障害)
3 統合失調症
4 せん妄
5 アルツハイマー型認知症
問題3 次のうち、境界性パーソナリティ障害の特徴として、適切なものを1つ選びなさい。
1 良心の呵責{かしゃく}の欠如
2 自分が重要であるという誇大な感覚
3 他人の感情への冷淡で無関心な行動
4 疑い深く、人に恨みを持ち続ける傾向
5 見捨てられることを避けようとするなりふり構わない努力
問題4 次のうち、うつ病でみられることがある症状として、適切なものを2つ選びなさい。
1 過眠
2 せん妄
3 誇大妄想
4 食欲亢進{こうしん}
5 知能低下
問題5 次の記述のうち、注意欠如・多動症(ADHD)の不注意の症状として、正しいものを2つ選びなさい。
1 しゃべりすぎる。
2 日々の活動で忘れっぽい。
3 自分の順番を待つことが困難である。
4 課題や活動を順序立てることが困難である。
5 不適切な状況で走り回ったり高い所へ登ったりする。
問題6 次の記述のうち、認知症患者に用いられるドネペジル塩酸塩について、正しいものを1つ選びなさい。
1 効能は認知機能の回復である。
2 血管性認知症に適応がある。
3 心疾患には特に注意が必要である。
4 服薬を中止すると強い離脱症状を認める。
5 神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を促進する。
問題7 次のうち、森田療法で用いられる理論や技法として、正しいものを1つ選びなさい。
1 転移
2 絶対臥褥{がじょく}
3 フラッディング
4 古典的条件づけ
5 カタルシス効果
問題8 次の記述のうち、精神科を主たる診療科名として標榜{ひょうぼう}する診療所について、正しいものを2つ選びなさい。
1 在宅医療を提供できる。
2 開設者には精神保健指定医の資格が必須である。
3 自立支援医療(精神通院医療)を利用できる。
4 精神保健福祉士の勤務が必須である。
5 「医療施設(静態・動態)調査」(厚生労働省)によると、2011年(平成23年)以降、診療所数が著しく減少している。
問題9 次のうち、精神保健指定医の診察の結果、応急入院が妥当と考えられる患者として、適切なものを1つ選びなさい。
1 自ら治療を求めて来院した不安障害の患者
2 妻が付き添って来院した振戦せん妄の患者
3 身元の全く分からない不穏で独語のある患者
4 家族に対して易怒的で、長男に連れてこられた前頭側頭型認知症の患者
5 幻覚・妄想が強く自傷他害のおそれのある統合失調症の患者
問題10 次の記述のうち、精神障害者の入院形態として、正しいものを1つ選びなさい。
1 任意入院では、48時間に限り退院制限を行うことができる。
2 医療保護入院では、家族等の同意により本人を入院させることができる。
3 措置入院は、家庭裁判所の権限による入院形態である。
4 緊急措置入院は、夜間に限って行われる。
5 「医療観察法」による鑑定入院は、都道府県知事の権限による入院である。

精神保健の課題と支援

問題11 次の記述のうち、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」に示されている内容として、正しいものを2つ選びなさい。
1 うつ病に伴う不眠症状では、睡眠による休養感の欠如が最も特徴的である。
2 成人してから加齢するにつれて夜間の睡眠時間が増加する。
3 蓄積された睡眠不足に伴う作業能率は「寝だめ」で十分回復する。
4 睡眠薬代わりの寝酒は睡眠を悪くする。
5 眠くなくても、寝床に入る習慣をつける。
問題12 次のうち、予防精神医学の概念を提唱した人物として、適切なものを1つ選びなさい。
1 ソンダース(Saunders, C.)
2 カプラン(Caplan, G.)
3 呉秀三
4 ピアジェ(Piaget, J.)
5 フロイト(Freud, S.)
問題13 次のうち、「児童虐待防止法」に定められているものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童相談所の設置
2 要保護児童対策地域協議会の設置
3 被措置児童等虐待に係る通告
4 家庭裁判所による保護者の接近禁止命令
5 児童虐待の定義
問題14 次のうち、性行不良で他の児童の教育に妨げがあると認められる児童がいた場合に、市町村の教育委員会がその保護者に対して、当該児童の出席停止を命ずることができると規定している法律として、正しいものを1つ選びなさい。
1 子ども・子育て支援法
2 学校保健安全法
3 教育基本法
4 学校教育法
5 社会教育法
問題15 次のうち、心身症患者の特徴を表す概念として、正しいものを1つ選びなさい。
1 アカシジア
2 アタッチメント
3 アドヒアランス
4 アイデンティティ
5 アレキシサイミア
問題16 アルコール健康障害対策基本法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 酒に酔っている者の行為を規制し、又は救護を要する酩酊{めいてい}者を保護する等の措置を講ずることによって、過度の飲酒の害悪を防止することを目的としている。
2 重度アルコール依存症入院医療管理加算の施設基準を定めている。
3 アルコール健康障害に関連して生じる飲酒運転、暴力、虐待、自殺等の問題をアルコール関連問題としている。
4 都道府県及び市町村に対し、アルコール健康障害対策推進基本計画の策定義務を規定している。
5 アルコールの輸入、輸出、製造、譲渡に関する規定がある。
問題17 次のうち、自殺対策におけるポストベンションの活動として、適切なものを1つ選びなさい。
1 自殺で亡くなった中学生の同級生に対して実施される心のケア
2 自殺対策強化月間におけるインターネットを活用した支援窓口の広報
3 救命救急センターに搬送された自殺未遂者に対するフォローアップ支援
4 地域住民に対するうつ病予防のための講演会
5 希死念慮を有する者を対象とした電話による相談
問題18 次のうち、女性よりも男性に多く認められるメンタルヘルスの問題として、正しいものを1つ選びなさい。
1 うつ病
2 抜毛症
3 自閉スペクトラム症
4 転換性障害
5 選択性緘黙{かんもく}
問題19 次のうち、「精神保健福祉法」に規定されている精神保健福祉センターの業務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健指定医の指定
2 精神保健審判員の任命
3 精神科病院入院患者の退院請求の審査
4 精神医療審査会の事務
5 自立支援医療(精神通院医療)の申請受付
問題20 WHOによるメンタルヘルスアクションプラン2013-2020に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国際疾病分類(ICD)の改訂を目標とした。
2 アルマ・アタ宣言とも呼ばれている。
3 「メンタルヘルスなしに健康なし」を原則としている。
4 精神疾患を有する者の非自発的な入院をなくすことが目標に定められた。
5 中低所得国における精神保健サービスの拡充を主たる目的としている。

精神保健福祉相談援助の基盤

問題21 次のうち、グリーンウッド(Greenwood, E.)が掲げたソーシャルワーク専門職の属性として、適切なものを1つ選びなさい。
1 個人的な責任を伴う、理論を携えた活動であること
2 地域社会の承認があること
3 専門職を養成するための教育システム及びその訓練課程があること
4 利他的な動機があること
5 構成員の大多数が加入している専門職能団体があること
問題22 次の記述のうち、精神保健福祉の理論や実践に影響を与えた人物の説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 ジョーンズ(Jones, M.)は、病院の全環境を治療手段として用いる治療共同体の概念を提唱した。
2 ミニューチン(Minuchin, S.)は、集団や人間の相互依存性によるグループダイナミクスに着目した。
3 ロジャーズ(Rogers, C.)は、様々な心理療法やカウンセリング理論の基本となっている面接技法を統合したマイクロカウンセリングを開発した。
4 レヴィン(Lewin, K.)は、システム理論に基づいた構造的家族療法を展開し、家族成員間の境界に着目した。
5 アイビイ(Ivey, A.)は、非指示的アプローチである来談者中心療法(クライエント中心療法)を確立した。
問題23 事例を読んで、この時点で、サービス管理責任者であるB精神保健福祉士がCさんに行うべき対応として、適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
就労移行支援事業所を利用しているCさん(47歳、男性)は、企業への就職を目標としている。支援を受けながら就職活動を続けているが、採用面接を受けてもなかなか決まらないでいる。最近では、イライラを募らせ物に当たったり、反対に塞ぎ込んだりする様子が見られていた。昨日、Cさんは感情を抑えることができず、若い職員に対して、「なぜ、他の人には良い職場を紹介するんだ」「どうせ俺は働けないと馬鹿にしているんだろう」「お前は素人か」と語気を強めた。そこでB精神保健福祉士は、今後のことについてCさんと話合いをすることにした。
1 就職に結び付かない現状を受け止められるよう、つらさをくみとる。
2 若い職員であっても、十分な知識や技術を持っていることを説明する。
3 これからはCさんと同年代の職員が、常に担当することを提案する。
4 求職活動を一旦中断し、趣味の時間を増やすことを勧める。
5 感情を抑えることができなければ、利用中止になることを伝える。
問題24 次の記述のうち、精神保健福祉士が行う自立支援として、適切なものを1つ選びなさい。
1 サービス担当者会議では、クライエントの混乱を避けるため、必要なサービスの利用に関する説明は最小限で行う。
2 福祉制度の活用を希望しているクライエントには、その理由について聞くとともに、申請の手続の説明を行う。
3 地域で生活をしているクライエントには、フォーマルネットワークよりインフォーマルネットワークを優先した支援を行う。
4 非自発的入院となったクライエントには、任意入院に切り替わってから退院支援を行う。
5 セルフヘルプグループの活動では、グループワークの技法を積極的に使用して、援助を行う。
問題25 福祉行政・関連行政機関に勤務する職員の主たる業務に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 児童福祉司は、子どもや保護者からの相談に応じ、家族関係の調整等を行う。
2 障害者職業カウンセラーは、障害者の職場で支援計画に基づく直接支援を行う。
3 知的障害者福祉司は、公共職業安定所(ハローワーク)に配置され、職業紹介を行うために必要な援助について明らかにする。
4 保護観察官は、医療観察制度の対象者の精神保健観察を行う。
5 精神保健福祉相談員は、精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談に応じ、必要な指導を行う。
問題26 次の記述のうち、「障害者総合支援法」に基づくサービスを提供する者が行う業務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 施設長(管理者)は、個別支援計画の策定や評価を行い、サービスの進捗状況を管理する。
2 生活相談員は、障害者からの相談対応、情報提供、連絡調整等の支援やサービス等利用計画の作成を行う。
3 相談支援専門員は、入所施設に必置とされ、入退所における面接や利用者の相談援助を行う。
4 サービス管理責任者は、社会福祉施設における専任の管理者であり、運営管理を行う。
5 居宅介護従業者は、地域で生活する障害者への訪問による介護を行う。
問題27 精神障害者の権利擁護に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 インフォームドコンセントとは、必要だと考えられる治療や検査の方法について、十分な説明をすることである。
2 リーガルアドボカシーとは、障害者自らが、法的な面から権利を主張する活動のことである。
3 援助の記録は、事実の経過や根拠を証明する資料として、権利擁護に貢献するものである。
4 ピアアドボカシーとは、地域の中で障害者が当たり前の生活を営めるように、市民参画型の活動を展開することである。
5 合理的配慮とは、障害者が他の者と平等に全ての人権や基本的自由を享有するための、必要かつ適当な変更や調整のことである。
問題28 ジェネラリスト・ソーシャルワークの成り立ちに影響を与えたモデルやアプローチに関する次の記述のうち、最も時期が古いものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントと地域社会が有する問題解決能力の強さを評価し、積極的に活用しようとするストレングスモデルが提唱された。
2 ソーシャルワークの共通基盤を確立した上で、そこから全体を特質づける枠組みを再構築するジェネラリストアプローチにより統合化が進んだ。
3 エコロジカル・ソーシャルワークが台頭し、人と環境の相互作用に焦点を当てた生活モデルが提唱された。
4 社会的に不利な状況に置かれた人の自己決定の能力や主張性を高め、主体的にその状況に働きかけ、改善するエンパワメントアプローチが台頭してきた。
5 「状況の中の人」に焦点を当てて、クライエントの問題状況を捉える心理社会的アプローチが提唱された。
問題29 次の記述のうち、マルチディシプリナリ・モデルの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 専門職はあらかじめ決められた役割をこなす。
2 各職種の役割はおおむね固定的であるものの、一部流動することもある。
3 多職種間で役割固定がなく、横断的な支援を行う。
4 各職種の専門性を基に活発に意見交換する。
5 専門職間に階層性がなく、相互作用性は大きい。

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)

次の事例を読んで、問題30から問題32までについて答えなさい。
〔事例〕
D精神保健福祉士は、処方薬への依存のためにU精神科病院の薬物依存症外来に通うEさん(26歳、女性)が減薬を目的に入院したことを契機に担当となった。主治医から話を聞いたり電子カルテの情報を確認したりしたD精神保健福祉士は、Eさんが、幼少期の実母による過酷な虐待や、思春期における性的被害の経験を有していることを把握した。そこで、薬物問題に加え、過去の逆境体験に対する理解や、その体験が現在に及ぼす影響をも視野に入れた支援が必要であると考えた。(問題30)
入院時のEさんは挑発的態度を繰り返しており、病棟スタッフとの信頼関係を築けずにいた。D精神保健福祉士は、過去の体験に基づく強い人間不信や自己否定感が根底にあることを読み取り、温かく落ち着いた関わりを続けた。その結果、Eさんは、主治医とD精神保健福祉士には心を許すようになり、「死にたい」と苦しい胸の内を打ち明けるようにもなった。(問題31)
Eさんは、病棟内のプログラム参加には消極的で、ルール違反ばかり繰り返していた。スタッフに注意されると、暴言を吐いたり自殺をほのめかしたりするので、スタッフの間にはEさんに対するネガティブな感情や不全感が蓄積され、いつしか病棟チーム全体が機能不全に陥りつつあった。そこで、D精神保健福祉士はケアカンファレンスでEさんを取り上げることを提案した。その中で病状や治療方針を共有したり、スタッフがEさんとの関わりの中で受けた傷つきや恐れの気持ちを表出できるよう働きかけたりした。また、相互の役割を確認し、日々の苦労をスタッフ間でねぎらい合えるようにした。その結果、病棟チームにあった刺々しい雰囲気が薄れ、Eさんの言動も徐々に落ち着きをみせるようになった。(問題32)
D精神保健福祉士は、Eさんの退院後の安全な生活を重視するとともに、過去に植え付けられた無力感や自己否定感から解放されることを目標とした。そして、もう一度自分の人生に対するコントロール感を取り戻すために、ストレングスに着目した支援を大切にしたいと考えていた。

問題30 次のうち、この時点でD精神保健福祉士が意識したEさんに対するアプローチとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 フェミニストアプローチ
2 課題中心アプローチ
3 ナラティブアプローチ
4 トラウマインフォームドアプローチ
5 解決志向アプローチ
問題31 次の記述のうち、D精神保健福祉士がこの時点において行った対応として、適切なものを2つ選びなさい。
1 Eさんには内緒で、両親に希死念慮があることを話した。
2 つらくても死んだりしないという約束をEさんから取りつけた。
3 どんなときに死にたくなるかをEさんに尋ねた。
4 人の命がいかに尊いものかをEさんに説明した。
5 Eさんが正直に気持ちを話してくれたことへの感謝を伝えた。
問題32 次のうち、D精神保健福祉士がケアカンファレンスを通して病棟チームに果たした機能として、正しいものを1つ選びなさい。
1 管理的機能
2 メンテナンス機能
3 教育的機能
4 タスク機能
5 支持的機能

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題2)

スーパービジョンに向け、自分の関わりを振り返った精神保健福祉士(34歳、女性)の記録(事例)を読んで、問題33から問題35までについて答えなさい。
〔事例〕
Fさん(32歳、女性)は、私が勤務する精神科病院に18歳から統合失調症で入院していた。私が担当になったのはFさんが22歳の春だった。入院中のFさんは年配者と過ごすことが多かったため、ロールモデルにできる人がおらず自分の将来像を描けないでいた。そのため、同世代である私は会うたびに話しかけ、Fさんの将来について語ってもらった。このことに刺激を受けたFさんは、次第に自分自身の存在を認め、退院を考えるようになった。(問題33)
Fさんが退院したのは28歳の時だった。Fさんは受診時には必ず相談室に顔を見せ、これからの夢を語っていった。私はFさんとの関わりを通し、信頼関係の構築を実感できるようになった。この頃Fさんは、経済的自立をするために働きたいと話していた。私は夢の実現への第一歩として、障害者就業・生活支援センターを紹介し、同行訪問することにした。面接の際Fさんは、「仕事がしたい」と伝えることはできたが、具体的な業種などの説明ができなかった。
Fさんは希望する業種の説明ができず落ち込んでいたが、普段は説明できていることや、夢や希望を持ち頑張れていることを伝えた。そして、働きたいという意欲を持っていることはFさんの強みであり、それが自己実現につながることをFさんに説明した。(問題34)
Fさんとの出会いから10年が過ぎ、私は病院から地域活動支援センターに異動し、Fさんと会う機会も減っていた。ある日のこと、Fさんから手紙が届いた。そこには、仕事も生活も順調であること。また、「結婚を前提に付き合っている人がいるが、もし子どもができたらどうすればいいか」と悩みが記されていた。その内容は、結婚や子どもができるかもしれないという将来への希望と、病気を抱えながら育てることへの不安、服薬による胎児への影響を心配しているものであると理解できた。(問題35)

問題33 次のうち、この時点で「私」がFさんとの関わりの際に支援目標として意識したこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 セルフエスティームの向上
2 服薬を自己管理する能力の向上
3 ストレスに対処する技術の向上
4 社会生活技能の向上
5 権利を主張する能力の向上
問題34 次のうち、この時期のFさんと「私」の関係について、適切なものを1つ選びなさい。
1 アドボカシー
2 ヘルパー・セラピー原則
3 パターナリズム
4 パートナーシップ
5 コンフリクト
問題35 次のうち、この時点のFさんの状況として、適切なものを1つ選びなさい。
1 スティグマ
2 フラストレーション
3 スケープゴート
4 アパシー
5 アンビバレンス

精神保健福祉の理論と相談援助の展開

問題36 次のうち、諸外国の精神保健医療福祉領域において資格化されている人材として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ニュージーランドにおける地域支援ワーカー
2 韓国における社会工作師
3 アメリカにおける認定ソーシャルワーカー
4 イギリスにおける認定ピアスペシャリスト
5 中国における精神保健専門要員
問題37 人口40万人のN市では、市の自殺対策推進計画に基づいて、市保健所が中心となり自殺対策を推進している。中学生の自殺報道が続いたため、市の中学校関係者や住民より、「自殺の連鎖が起こらないよう、取組を強化してほしい」と、市保健所へ要望が相次いだ。自殺対策の担当であるG精神保健福祉相談員は、市自殺対策推進会議で、児童生徒など若年層への予防的取組の強化を提案することとした。
次の記述のうち、この時点でのG精神保健福祉相談員の提案内容として、適切なものを2つ選びなさい。
1 教師を対象とした、ゲートキーパーの養成研修を開催する。
2 自殺の相談は、保健所での来所面接で一括して対応する。
3 自殺の危険性が高い人の早期発見は、精神保健福祉士の固有の役割であることを広報する。
4 メディアリテラシー教育とともに、情報モラル教育及び違法・有害情報対策に協力する。
5 自殺の連鎖を防ぐため、自殺の場所や手段などの詳細を繰り返し伝える。
問題38 次のうち、アンソニー(Anthony, W.)らの提唱した精神科リハビリテーションの基本原則に関する記述として、適切なものを1つ選びなさい。
1 様々な技法を駆使するよりも、特定の技法を適用する。
2 障害のレベルに応じて、本人の参加の可否を判断する。
3 生活能力の向上よりも、症状の軽減を優先する。
4 熟慮した上で依存を増やすことは、結果的には本人の自立につながる。
5 本人の技能開発の積み重ねが、回復の十分条件となる。
問題39 次の記述のうち、精神科デイ・ケアにおけるリワークプログラムとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 職場復帰してから開始する。
2 病気の再発防止よりも、作業能力向上を目指す。
3 プログラム終了の判断は産業医が行う。
4 グループワークで、職場の人間関係の課題が再現された場合に気付きを促す。
5 本人の同意の有無にかかわらず、情報は精神科デイ・ケア内にとどめる。
問題40 次の記述のうち、包括型地域生活支援プログラム(ACT)の標準モデルとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 軽度の精神障害者で、かつ本人の希望があれば利用できる。
2 ケアの提供は日中を基本とし、夜間や休日は他機関に委ねる。
3 担当者が不在の時にも、多職種チームがケアを提供する。
4 利用開始時に期限を決めて、短期間で支援を終結する。
5 仲介型のケアマネジメントを基本とする。
問題41 次の記述のうち、精神保健福祉士が行う援助プロセスにおけるアセスメントの説明として、適切なものを1つ選びなさい。
1 援助活動の効果を評価する。
2 利用者の課題の達成状況を振り返る。
3 利用者の状況を把握し、社会資源の精査をする。
4 具体的な援助内容を立案する。
5 援助を受ける意思を利用者に確認する。
問題42 Hさん(40歳、男性)は、アルコール依存症の入院治療を終え、現在は定期的な外来通院やセルフヘルプグループへの参加を継続している。病棟でHさんを担当していたJ精神保健福祉士は、退院して半年後、Hさんの外来の待合室での様子が気になったことから、「お久しぶり」と声をかけ、面接室で話を聴くこととした。Hさんは、「参加している自助グループの人間関係で悩んだりすることもあるが、トラブルにならないように何とか関係を保てている。今日は話を聴いてもらえてよかった」と語り、J精神保健福祉士はセルフヘルプグループの様子やHさんの気持ちを傾聴した。
次のうち、Hさんの支援過程においてJ精神保健福祉士が行ったこの面接の位置づけとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 プランニング
2 モニタリング
3 エバリュエーション
4 ターミネーション
5 フォローアップ
問題43 次の記述のうち、精神保健福祉士がクライエントに対して行う面接技法の直面化の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 話した内容を別の言葉に換えて簡潔に伝え返すこと。
2 話した内容の矛盾点を見定めて指摘すること。
3 黙っていることの意味をくみとってまとめて話すこと。
4 考えや気持ちを単純な質問で引き出すこと。
5 否定的な内容を肯定的な意味づけに変えること。
問題44 次の記述のうち、グループワークにおいて精神保健福祉士が行うこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 グループ内の規範を定めずに、メンバーの自由な活動を推進する。
2 メンバーの役割を固定して、効率的にプログラムを進行する。
3 メンバーの体験談を活用して、社会的スキルの獲得を促進する。
4 メンバー間の葛藤を回避して、グループ活動が円滑に進むようにする。
5 終結期では、メンバー間の凝集性を強化する。
問題45 事例を読んで、次の記述のうち、精神保健福祉士が面接場面でKさんの母親に提案したこととして、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Kさん(28歳、男性)は、大学在学中に統合失調症と診断され、卒業後は就職せずに自宅療養が続いていた。半年前から精神科デイケアを利用している。Kさんはデイケア担当の精神保健福祉士との面接で、「やっとデイケアに慣れたところなのに、父にも母にも『世間体が悪いので、早く働け』と毎日言われ、まいっている」と話した。精神保健福祉士は、Kさんの了解を得て母親と面接することになった。面接で母親は、「Kはデイケアに行く以外は寝てばかり。近所の目も気になり、ついイライラして小言を言ってしまう。もう28歳にもなるのに仕事もせず、親戚の集まりで肩身が狭い。父親はもうすぐ60歳になるし、早く働いてほしい」と畳み掛けるように話していた。
1 「病気の経過や治療方針について主治医から改めて説明してもらってはどうでしょうか」
2 「世間の人はあまり見ていないので、気にしないようにしてください」
3 「心配事を話せる場として家族教室に参加してはどうでしょうか」
4 「Kさんを毎朝起こし、生活リズムを管理しましょう」
5 「Kさんにはデイケアをやめて就労移行支援事業所に通所してもらいましょう」
問題46 次の記述のうち、コンサルティの説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 コンサルタントから監督及び指導を受ける。
2 業務上の課題を抱えた個人、集団、組織、地域社会である。
3 コンサルタントがクライエントに対して直接的な援助を行う。
4 個人の抱えた私的な悩みをコンサルタントに伝え、相談する。
5 得られた助言の内容は、自ら評価し、採用するかを決める。
問題47 事例を読んで、Lさんとその母親に対するM精神保健福祉士の対応に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
Lさん(48歳、男性)は精神科病院に入院して1年が経過している。入院して6か月の時点で退院調整を始めた矢先に同居の母親が脳梗塞で緊急入院となり、Lさんの動揺も相まって退院が遅れていた。父親は10年前に亡くなり他に家族はいない。母親は左上下肢に多少の麻痺{まひ}が残るも1か月前に自宅退院し、訪問介護を利用している。Lさんは、「自分も早く退院して苦労をかけた母親の面倒を見て恩返しがしたい」と話し、病棟のM精神保健福祉士は相談支援専門員と連携してLさんの退院支援を進めた。退院前の自宅外泊から病棟に戻ってきたLさんは、切羽詰まった様子で、「昨日の夕食後、母親が皿を片付けようとした時によろけて尻もちをついてしまった。割れた食器が床に飛び散り、自分はパニックになって何もできなかった。同じようなことがまた起きたらどうすればいいのか」とM精神保健福祉士に訴えた。
1 Lさんの不安が解消されるまで入院できることを伝える。
2 Lさんと昨日の夕食後に起きたことを順序立てて、一緒に振り返る。
3 母親の介護医療院の利用を担当の介護支援専門員に検討してもらう。
4 Lさん、母親、M精神保健福祉士、介護支援専門員、相談支援専門員による自宅での会合を提案する。
5 Lさんに相談支援専門員同行で生活介護事業所の見学を勧める。
問題48 次のうち、ケアマネジメントに関する記述として、適切なものを2つ選びなさい。
1 家族や関係者の抱える負担の解決を一義的な目的とする。
2 利用契約を結んだ上で、利用同意の説明を丁寧に行う。
3 ケア計画は本人の意向で変更できないことを説明する。
4 本人の了解を得て、必要に応じてボランティアと情報共有を図る。
5 契約後であっても、本人の希望に応じて担当する相談支援専門員を変更できると伝える。

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題1)

次の事例を読んで、問題49から問題51までについて答えなさい。
〔事例〕
精神保健福祉センターの思春期相談担当のA精神保健福祉士(以下「A相談員」という。)の下に、Bさん(45歳、女性)が娘Cさん(14歳)のことで相談に来た。Bさんの話によると、「Cは3か月ほど前の中学2年に進級した頃から食べなくなり、急激に痩せてきた。食べるように言うと怒って部屋に入ってしまうので、どうしたらいいか分からない」「養護教諭からこちらの思春期相談を勧められ、本人が拒んだので私だけで相談に来た」という。面談を終えた後、A相談員はBさんに少し待ってもらい、Cさん宛てに書いた手紙を渡してもらうように伝えた。(問題49)
2週間後、CさんはA相談員の下を訪れ、面談するようになった。Cさんは面談の中で、「勉強も部活も頑張ってきた。陸上部で良い成績を出すために減量を始めたが、最近は練習についていけない。部活の友達にはどうしても負けたくない」「家で母親に食べろと言われるのがとても嫌でよくけんかになる。でも、仕事で活躍している母親のことは尊敬している」などと話すようになった。
週に一度の面談を1か月ほど重ね、夏休みを迎えた頃、Cさんは、「部活の顧問から体調が心配だから休むように言われてしまった」「家で過食や嘔吐{おうと}を繰り返している」「もうどうしていいか分からない」とA相談員に訴えるようになった。その頃には更に痩せて、肥満度マイナス25%まで減少していた。A相談員はCさんに児童専門の精神科受診を勧めていたところ、ようやく受診に至った。診察後、主治医は、「今の状態が続くと2学期の登校は難しいのではないか」とCさんとBさんに伝えたが、Cさんは学校も部活も休みたくないと希望した。報告を受けたA相談員は、CさんとBさんに学校、医療機関との関係者会議を持つことを提案した。(問題50)
関係者会議の数日後、Bさんは一人でA相談員の下へ相談に訪れた。Bさんは、「Cがこのようになったのは私のせいではないか」「このまま仕事を続けていていいものか悩んでいる。しかし、実は責任のある仕事を任されるようになったばかりで、誰にも相談できずにいる」と思い詰めた様子で語った。(問題51)

問題49 次の記述のうち、A相談員がCさんに書いた手紙の内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 あなたは摂食障害という病気なので、早めに相談に来てください。
2 なぜ食べられないのでしょうか。一緒に考えていきましょう。
3 家族のことや学校のことなど、なんでもいいので話に来ませんか。
4 あなたのつらさの要因はご家族にあるので、あなたは何も悪くありませんよ。
5 あなたを入院させたくないので、まずこちらに相談に来ませんか。
問題50 次の記述のうち、A相談員が提案した関係者会議の目的として、適切なものを2つ選びなさい。
1 Cさんが食べない原因を共有し、食事と体重管理の体制を構築する。
2 学校が実施できる合理的な配慮について確認する。
3 忙しいBさんに配慮し、今後の方針を医療機関と学校で決めていく。
4 Cさんの病状と治療計画に関する情報を学校関係者と共有する。
5 Cさんの気持ちをくんで、放課後の部活動への参加を検討する。
問題51 次の記述のうち、BさんへのA相談員の対応として、適切なものを1つ選びなさい。
1 仕事を続けるかどうかは、Cさんに決めてもらってはどうかと提案する。
2 母親としての役割は大きいので、しばらく仕事は控えるよう助言する。
3 Cさんの病気の要因として考えられることを挙げてもらい、改善策を伝える。
4 Cさんのためにも、責任ある仕事を引き受けて活躍する姿を見せるよう勧める。
5 Cさんのケアと仕事を両立する方法を検討し、Bさんが選択できるよう支援する。

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題2)

次の事例を読んで、問題52から問題54までについて答えなさい。
〔事例〕
Dさん(62歳、男性)は、和食店で働いていた25歳の時に統合失調症を発症した。入退院を繰り返したが、40代以降は母親と同居し、通院のみで病状も落ち着いていた。Dさんが55歳の時に同居の母親が亡くなって、一人暮らしとなったために生活が乱れて妄想がひどくなり、精神科病院に入院となった。その後、Dさんは相続した自宅を不本意ながら売却することになった。Dさんは、入院後も何度か病状が再燃し、5年が経過した。新たに病棟担当になったE精神保健福祉士がDさんと面接すると、Dさんは、「自分は長男だから家を守っていくつもりだった。弟に『兄さんのこれからの生活のためにも売却した方がいい』と押し切られた」と感情的に語った。(問題52)
Dさんは、E精神保健福祉士との面接を通して徐々に落ち着きを取り戻し、主治医より退院の話も出るようになった。そして、「一人暮らしをしてみたい」と話し、退院を希望した。入院中の服薬や食事などの管理は看護師が行っていたが、「今はいい状態なので、帰る家さえ決まれば退院できると思う。一人暮らしは初めてだが、料理はできるし、なんとかなる」と話した。E精神保健福祉士は、本人も参加するカンファレンスで退院に向けた病棟での働きかけを検討した。(問題53)
Dさんは、地域移行支援を利用し、グループホームの体験宿泊を繰り返しながら、退院準備を進めた。掃除やごみ出しに苦労していたが、半年後に退院し、ホームヘルパーに掃除や洗濯を手伝ってもらいながら一人暮らしをしている。また、自宅で料理を楽しんだり、地域活動支援センターの料理会に積極的に参加している。1年が経過した頃、相談支援事業所のF精神保健福祉士は、ホームヘルパーよりDさんが時々訪問日を間違えると報告を受けた。また、外来で何度も血糖値の高さも指摘された。Dさんも、「この前、道に迷ってしまった。コンロの火を消し忘れてしまった。今まではそんなことなかったのに」と言っており、F精神保健福祉士は本人と相談して、主治医を含む関係者とカンファレンスを開催することにした。(問題54)

問題52 次の記述のうち、この時にE精神保健福祉士がDさんに伝えた言葉として、適切なものを1つ選びなさい。
1 「長男として悔しいし、やりきれなかったですね」
2 「弟さんはDさんの意向に反して実家を処分し、ひどい人ですね」
3 「病棟の中でDさんの楽しめることを見付けていきましょう」
4 「お母様は亡くなる前にDさんのことを考えてくれればよかったですね」
5 「実家はもうないので、諦めましょう」
問題53 次の記述のうち、カンファレンスで検討したこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 病棟の看護師がDさんの服薬管理を強化する。
2 ピアサポーターにDさんの一人暮らしに必要な日用品の買物を依頼する。
3 病棟で間食の量を決めてカロリーを制限する。
4 病気の理解を深めるための勉強会に参加する。
5 アパート探しのために外出する。
問題54 次の記述のうち、カンファレンスで示された方針として、適切なものを2つ選びなさい。
1 糖尿病の専門外来につなげる。
2 ホームヘルパーは、Dさんに代わって買物や料理を行う。
3 困ったときの相談先をあらかじめDさんと確認しておく。
4 Dさんが道に迷うことが心配なので、外出を控えてもらう。
5 地域活動支援センターの料理会は火を扱うので、他のプログラムを勧める。

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題3)

次の事例を読んで、問題55から問題57までについて答えなさい。
〔事例〕
留学生であるV大学1年生のGさん(19歳、男性)は、日本のアニメに興味を持ち、V大学に入学した。Gさんは大学の学生寮に入寮し、アニメ同好会に入部した。友人もでき、同級生のHさんとも仲良くなり、楽しい大学生活が始まったと実感していた。しかし、夏休みにHさんと些細{ささい}なことでけんかして疎遠になり、夏休み明けから大学を休みがちになった。心配した友人のJさんはGさんにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で連絡をするが、返信がなかった。12月になりGさんは、SNSに「みんなに嫌われているから大学に行きたくない」「最近は怖くて外にも出られない」などと書き込んだ。心配したJさんは、このことを学生課に相談した。その後、学生課より連絡を受けた、学生相談室のK精神保健福祉士(キャンパスソーシャルワーカー)は、今後の対応について検討した。(問題55)
その後、K精神保健福祉士と定期的に面接を行うことができるようになったGさんは、元来努力家で真面目な性格なため、「授業を欠席することに罪悪感がある」「もうみんなに嫌われているかもしれない。不安だ。大学に行けない」「最近は夜も眠れず、体がだるい」と話した。K精神保健福祉士は、Gさんのつらさや不安に寄り添いながらW精神科クリニックへの受診を勧め、同行した。診察の結果Gさんは適応障害と診断され、3か月程度の療養が必要と言われた。それを受け、Gさんは両親やK精神保健福祉士とも相談し、大学を休学し一度帰国して自国で療養することとなった。(問題56)
3か月が過ぎた頃、GさんからK精神保健福祉士に、「元気になったから、また後期から大学に行きたい。来週、日本に戻るので相談したい」と連絡があった。その後の面談では、「友人とうまくやっていけるか心配だし、不安になるとまた眠れなくなる」とGさんが語った。それを踏まえて、K精神保健福祉士はGさんが2年生後期から復学するための準備として、友人との関係を回復するために、大学の学生相談室で行われているSSTのうち、個別支援ができる「ひとりSST」にGさんを誘ってみた。(問題57)

問題55 次の記述のうち、この時点でのK精神保健福祉士が検討した内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 大学全体で考えるために、全教員にGさんの情報を知らせる。
2 Jさんに心配している内容を確認する。
3 学生たちに対して、SNSのルールについての講習会を開く。
4 留学生が一人にならないために、支援体制を整える計画を大学へ提案する。
5 Gさんに連絡し、「なぜ、そのようなことをしたのか」と注意する。
問題56 次の記述のうち、この場面でK精神保健福祉士がGさんにかけた言葉として、適切なものを1つ選びなさい。
1 「どんなアニメが好きですか」
2 「Hさんと何があったのですか」
3 「これまで受診しなかったのはどうしてですか」
4 「家族の中に、精神科受診歴のある人はいますか」
5 「休学について、何か不安はありますか」
問題57 学生相談室で行われた「ひとりSST」の場面で、K精神保健福祉士がGさんに対して期待したこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 自分自身を振り返り、不安になった理由を考えること
2 アルバイトを探して、経済的に安定すること
3 交際相手を見付けて、楽しい生活を送ること
4 ピアサポーターとなって、他の留学生の支援を行うこと
5 受診や服薬を忘れずに行い、規則正しい生活を送ること

(精神保健福祉の理論と相談援助の展開・事例問題4)

次の事例を読んで、問題58から問題60までについて答えなさい。
〔事例〕
政令指定都市のP市保健所で働くL精神保健福祉相談員(精神保健福祉士)(以下「L相談員」という。)に、P市に住む父親のMさん(80歳)と長女のAさん(50歳)の事で、民生委員から相談があった。「ごみが庭にあふれ悪臭もあり、近隣住民が不安に思っている。Mさんは外に向かって怒鳴るし、Aさんの姿を見なくなった。精神的な病気があるかもしれないので保健所に相談に来た。MさんとAさんが心配だ」とのことだった。次の日、L相談員はMさん宅を訪問した。(問題58)
玄関から声をかけるとMさんは、「俺の勝手だ。ほっといてくれ」と強い口調で言いドアを閉めた。Aさんの姿は確認できず、名刺を置いてMさん宅を離れた。L相談員は、Mさん親子についての情報収集や今後の支援方法を、関係機関と検討する必要があると判断し、地域包括支援センターに連絡した。その結果、地域ケア会議が開かれることとなり、初回会議にはL相談員の他に地域包括支援センターの保健師、社会福祉協議会の福祉活動専門員、P市高齢福祉課の担当者、民生委員が参加した。(問題59)
L相談員が訪問を続けると、Aさんが玄関先に出てくれるようになった。2か月が過ぎた頃Aさんから、「何とかしようと思っていました。でも父は怒りやすくなり、話もかみ合わなくて。私も気分が落ちて、朝は布団から出られなくなって。2年前に15年ほど勤めた会社を辞めたんです。それから、どうしようもなく…」と話があった。詳しく話を聴くと、Mさんには認知症、Aさんには精神疾患の疑いがそれぞれあり、支援を希望していることが分かった。
チームによる支援を続け1年が過ぎた。少しずつ居住環境は改善されつつある。また、現在Mさんは通所介護(デイサービス)を利用しており、Aさんは精神科クリニックへ通院を続けている。Aさんは、「気持ちが落ち着いてきたような気がします。でもこれからですね」とL相談員に話した。この支援をきっかけに、L相談員はMさん親子のような課題を持つ方への支援の充実や支援体制の構築が必要と考え、「障害者総合支援法」に基づくP市協議会で検討することを提案してきた。(問題60)

問題58 次のうち、この時点のL相談員が行った援助方法として、正しいものを1つ選びなさい。
1 アドミニストレーション
2 アサーション・トレーニング
3 アウトリーチ
4 アクションリサーチ
5 アクティング・アウト
問題59 次の記述のうち、この時点の会議におけるL相談員の提案として、適切なものを1つ選びなさい。
1 「積極的な介入をそれぞれ競い合いましょう」
2 「期間を設定して、アセスメントをしましょう」
3 「所属の専門性をいかした独自の支援計画を立て、それぞれ進めましょう」
4 「チームの人数をもっと増やして、支援体制を作りましょう」
5 「訪問は、どんな状況でも同じメンバーでしましょう」
問題60 次の記述のうち、L相談員がP市協議会で最初に提案したコミュニティソーシャルワーク実践の内容として、適切なものを1つ選びなさい。
1 SWOT分析を用いて、住民意識や支援者の状況を把握する。
2 P市の全戸訪問を行い、セルフネグレクトの可能性がある世帯を把握する。
3 Mさん家族に対応した支援ネットワークの形を変えず、他の地域課題にも対応していく。
4 P市全域を対象として、見守りボランティアを募る。
5 メーリングリストを活用して、クライエントの個人情報を迅速に共有する。

精神保健福祉に関する制度とサービス

問題61 措置入院に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健指定医の権限で入院を決定する。
2 「精神保健福祉法」により、国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。
3 病院の管理者は、本人へ入院に関する告知を行う義務がある。
4 定期病状報告は市町村長に対して行う。
5 病院の管理者が措置の解除を行う。
問題62 「医療観察法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神保健審判員は生活環境調査を実施する。
2 検察官からの申立てを受けた家庭裁判所は合議体を形成する。
3 通院医療の継続が必要な場合は、保護観察所の長が延長の申立てを行う。
4 地方裁判所は処遇の実施計画を作成する。
5 入院処遇における退院の決定は、保護観察所が行う。
問題63 発達障害者支援センターに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 子ども・若者育成支援推進法に規定された機関である。
2 発達障害についての研修を行う。
3 特別支援教育コーディネーターの配置が義務づけられている。
4 設置主体は市町村である。
5 利用には障害支援区分の認定を受ける必要がある。
問題64 精神障害者への経済的な支援に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 初診日が20歳未満である精神障害者は、特別障害給付金が支給される。
2 雇用保険における求職者給付の基本手当の申請窓口は、労働基準監督署である。
3 精神障害者は、特別障害者手当の支給対象より除外される。
4 生活困窮者住居確保給付金は、賃貸住宅の入居契約のための敷金、礼金を基準として支給される。
5 精神障害者保健福祉手帳所持者のうち、障害等級2級の者は所得税の障害者控除の対象である。
問題65 次のうち、保健所の精神保健福祉業務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神障害者保健福祉手帳の交付決定
2 日常生活自立支援事業の事務
3 医療保護入院者の入院届の受理
4 障害支援区分の認定調査の実施
5 地方精神保健福祉審議会の設置
問題66 アルコホーリクス・アノニマス(AA)に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 アルコール依存症者の家族を対象としたグループである。
2 アルコール依存症者の就労支援を目的としたプログラムである。
3 組織の運営は専門職の関与を前提とする。
4 12のステップを採用している。
5 実名での参加を原則とする。
問題67 更生保護制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 矯正施設での施設内処遇が原則となる。
2 仮釈放の決定を行うのは、地方裁判所である。
3 保護観察の期間は、保護観察所が決定する。
4 仮釈放者は、自立更生促進センターに入所することができる。
5 地域生活定着支援センターは、保護観察所に併設される。
問題68 退院後生活環境相談員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 担当できる医療保護入院者の人数の目安は概ね50人以下である。
2 措置入院者の退院促進も対象となる。
3 精神療養病棟に必置としている。
4 「精神保健福祉法」第27条第3項に基づく精神保健指定医の診察に立ち会う。
5 精神保健福祉士として3年以上の相談・指導経験を必要とする。
問題69 Q市では、精神障害者の就労への意向の実態と関連要因を把握するため、市内の就労移行支援事業所の全利用者を対象に郵送によるアンケートを行った。調査票は主に尺度で構成された。さらに、同意が得られた者には調査員が自宅に訪問し、就労に対する気持ちの変化を聴き取る面接調査を行った。アンケートの分析から、当事者同士の交流頻度と就労への意欲との間に正の相関関係があることが分かった。また面接の語りの分析からは、仲間の就労体験を聞くことで自分自身も就労したいという意欲につながる過程が示された。
次のうち、この調査で用いられた社会調査の手法として、正しいものを1つ選びなさい。
1 層化抽出法
2 ミックス法
3 参与観察法
4 コホート調査法
5 パネル調査法

(精神保健福祉に関する制度とサービス・事例問題)

次の事例を読んで、問題70から問題72までについて答えなさい。
〔事例〕
Bさん(50歳、男性)は30代の頃に統合失調症を発症し、両親が自宅で面倒を見ていた。しかし、その両親が交通事故で亡くなると、病状が極めて不安定になり、最終的にX病院に2010年(平成22年)に入院した。入院後1年で病状は落ち着いたものの、退院が迫ると病状が悪化するなど、不安定な状態になることを10年ほど繰り返していた。
地域の相談支援事業所のC精神保健福祉士は、X病院からBさんについて紹介を受け、Bさんに話を聞いた。Bさんは、「退院はともかく、外の世界が今どうなっているかは知りたい。あと病院の外で食事をしてみたい」とぽつぽつと話した。Bさんは、「障害者総合支援法」における地域相談支援に基づくサービスを利用し、C精神保健福祉士と一緒に社会資源の見学をし、外出のついでに食事などをした。外出のたびにC精神保健福祉士は、Bさんに地域での暮らしをイメージしてもらえるように働きかけた。(問題70)
BさんはC精神保健福祉士と一緒に行動するにつれ、退院に興味を持ち始めたが、「身寄りのない自分は困ったときに誰にも相談できない。心細い」と不安を訴えた。C精神保健福祉士は、「障害者総合支援法」における地域相談支援に基づくサービスを紹介し、随時、退院後の相談に乗ることとした。(問題71)
退院したBさんは、両親から残された自宅で、上記の支援とホームヘルプサービスを利用して当初生活していた。しかし実際に一人暮らしをしてみると生活上の困難が思いの外大きいことが明らかになり、共同生活援助(グループホーム)を利用することになった。一旦はグループホームに馴染{なじ}んだかに見えたBさんだったが、そのうちC精神保健福祉士に、「人と一緒に暮らすのは自分にはどうしても向いていない」「にぎやかな感じが苦手」という訴えを漏らすようになった。そこでC精神保健福祉士は、Bさんと相談しながら改めて自宅での生活を検討した。その中で、ある法律の改正で2018年(平成30年)に新設された、居宅における自立した生活を営む上での支援を目的とし、原則1年の期限で訪問と適宜の相談を提供するサービスを利用することとした。(問題72)

問題70 次のうち、Bさんがこの時点で利用した制度の名称として、正しいものを1つ選びなさい。
1 行動援護
2 同行援護
3 機能訓練
4 地域移行支援
5 成年後見制度利用支援事業
問題71 次の記述のうち、Bさんが利用した制度の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 利用期間は原則無期限である。
2 障害支援区分の区分3以上の者が対象である。
3 家族との同居から一人暮らしに移行した者も対象である。
4 宿泊型自立訓練の利用者は対象である。
5 共同生活援助(グループホーム)の利用者は対象である。
問題72 次のうち、このサービスを利用する際に必要な手続として、正しいものを1つ選びなさい。
1 日常生活自立支援事業の利用
2 障害支援区分の認定
3 自立支援医療(精神通院医療)の受給
4 サービス等利用計画の作成
5 指定通院医療機関への通院

精神障害者の生活支援システム

問題73 「障害者総合支援法」に基づく宿泊型自立訓練に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 標準利用期間は原則1年である。
2 市町村地域生活支援事業の任意事業に位置づけられている。
3 介護給付費が支給される事業である。
4 介護サービス包括型や外部サービス型などの種別がある。
5 所得に応じた利用者負担上限月額が設けられている。
問題74 次の記述のうち、「障害者雇用促進法」に基づく職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 職業リハビリテーションに関して研究する。
2 円滑な就職と職場適応ができるよう、障害者と事業所の双方を支援する。
3 就業面の支援に併せて、体調や生活のリズムの管理に関する支援を行う。
4 対象となる障害者が、正式に就職してから支援を開始する。
5 障害者雇用率未達成の事業主に対して指導する。
問題75 次の記述のうち、厚生労働省が発表した障害者の雇用の状況等について、正しいものを1つ選びなさい。
1 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)のハローワークを通じた障害者の就職率は20%未満である。
2 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)の障害者雇用の就職件数において精神障害者の割合は30%未満である。
3 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業における実雇用率は企業の規模が大きいほど高い。
4 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている精神障害者の数は、ここ5年間で横ばいである。
5 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている障害者の数では、精神障害者が知的障害者よりも多い。
問題76 次のうち、精神障害者の場合、精神障害者保健福祉手帳の所持が前提となるものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 就労移行支援事業所の利用
2 「障害者雇用促進法」に基づく障害者雇用率の算定
3 救護施設への入所
4 住宅入居等支援事業の利用
5 自立準備ホームへの入所
問題77 次の記述のうち、「障害者総合支援法」における基幹相談支援センターの説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者への医学的、心理学的及び職能的判定業務を行う。
2 自立支援給付に位置づけられる。
3 職業準備講習を行う。
4 発達障害者は支援の対象外である。
5 地域の相談支援体制の強化に取り組む。

(精神障害者の生活支援システム・事例問題)

次の事例を読んで、問題78から問題80までについて答えなさい。
〔事例〕
Dさん(70歳、女性)は、統合失調症で精神科病院に長期入院をしていたが、10年前に退院に向けた支援を受けながら地域に戻った。その後、定期的な通院を続け、「障害者総合支援法」に基づくY機関に通所しながらアパートで一人暮らしを続けている。Dさんには妹がおり、アパートの近くに住んでいて関係は良好である。Dさんは週3回通所しているY機関で、公園の清掃活動とお菓子の箱折等の作業を行い、月1万円程度の工賃を得ている。DさんはY機関と雇用契約を結んでいない。(問題78)
Dさんは、Y機関での工賃と障害年金を受給しながら生計を立てている。Dさんは安定した地域生活を送っていたが、最近になって日常の複雑な動作が難しくなり、運動能力の低下も顕著になってきた。Dさん自身もそのことを自覚し、Y機関のE職員(精神保健福祉士)に、健康面での不安を抱いていること、日常生活においても調理や家事も少しずつ大変になってきていることの相談をした。そこでE職員はZ相談支援事業所のF職員(精神保健福祉士)に担当者会議の開催を依頼した。Y機関ではDさんの作業内容の見直しを検討した。その結果、公園の清掃活動を中止し軽作業のみ行うこととなり、通所回数を週2回にすることにした。E職員は「障害者総合支援法」に基づき個別支援計画の変更を行った。(問題79)
F職員はDさんと面接を行い、Dさんの生活状況を確認した。元々Dさんは整理整頓ができていたが最近では体が思うように動かず、ごみ出しができなくなっていたことや、一人で調理をすることが難しくなっていたことが分かった。また、日常生活のサポートは妹に頼っていたことも分かった。F職員が介護保険サービスの利用を提案したところ、Dさんも妹も利用に前向きな回答をした。そこで、F職員はDさんの介護保険サービスの利用に向けて調整を行った。その後、Dさんは介護保険サービスの利用申請を行い、認定調査の結果、要介護1の判定が出た。(問題80)

問題78 次のうち、Dさんが現在利用しているY機関として、正しいものを1つ選びなさい。
1 就労継続支援B型事業所
2 就労継続支援A型事業所
3 就労移行支援事業所
4 地域障害者職業センター
5 障害者就業・生活支援センター
問題79 次の記述のうち、E職員が行った個別支援計画の変更に関する説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 変更後、12か月に1回モニタリングをしなければならない。
2 変更にはDさんの妹の同意が必須である。
3 変更に当たっては、障害者職業カウンセラーが最終的な責任を持つ。
4 変更後の個別支援計画を、Dさんに交付しなければならない。
5 変更に当たっては、E職員はDさんと面接を行う。
問題80 次のうち、F職員がDさんに提案した介護保険サービスとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 重度訪問介護
2 訪問介護
3 訪問入浴介護
4 居宅介護
5 療養介護
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